新野安と夜話のブログ

新野安がマンガやエロマンガについて文章を書いたりするブログ。Webラジオ「エロマンガ夜話」「OVA夜話」の過去ログ紹介も。

カテゴリ: ベスト・ランキング

あけましておめでとうございます。新野安です。


2018年はアウトプットが増えた年でした。なんといっても夏から始めた同人活動で、『〈エロマンガの読み方〉がわかる本』『〈エロマンガの売れ方〉がわかる本』と二冊の本を執筆・編集したことに、これまでの活動を形にできた満足感がありました。稀見さん、泉さん、たけのこ星人さん、へどばんさん、自分が強く影響を受けた方々に仕事をお願いできたのも嬉しかったです。また雑誌では、『ユリイカ』の岡田麿里特集・山本直樹特集、『フィルカル』の推論主義企画、『マンガ論争』の2018年マンガ総括企画に参加しました。特に山本直樹特集に寄せた論考は、以前から自分のテーマとして持っていたエロマンガ史の捉え方を文章化する機会になりました。さらに、文フリのペーパーで『ガラスの仮面』、ブログで『serial experiments lain』と、自分のフェイバリット作品に関する文章を発表できました。

2019年も同人活動は続けていく予定で、早速夏コミに向け準備を進めております。また、文フリで発表した『ガラスの仮面』論に「①」とナンバリングをしましたが、このシリーズは今後も書き継いでいきます。今年も一般・18禁問わずいろいろなテーマで語っていきたいです。よろしくおねがいいたします。

前置きが長くなりましたが、2018年エロマンガベストテンを発表したいと思います。去年同様、無理に順位をつけずベスト10を挙げます。「エロさ」も、いわゆる「ストーリー」の面白さも、どちらも(エロ)マンガの魅力であって、面白ければOK。というスタンスをベースに選びます。当然ですが、私が読んだ作品から選んでいます。網羅的に2018年のエロマンガをチェックしているわけではないので、その点ご了承ください。


・きぃう『なんでも調査少女+』


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『マンガ論争』で同人誌発の商業単行本をテーマに文章を書きましたが、同じ枠からの一冊。
「エロのわんこそば」とでもいうべきか、数ページ1シチュエーションを超速で連続に叩き込みまくる。
即堕ち2コマイラストにも近いですが、きぃう先生の濃いエロ演出によって、個々のおわんのカロリーは非常に高いです。一気に食べて胸焼けしましょう。


・香吹茂之『搾精女子』


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香吹茂之先生が展開してきた狂気のような数式群、今回はSM×本格ミステリです。「雄鳴館殺人事件」シリーズを収録しています。
あまりにも真面目にパロディした結果対象と同化してしまうのが香吹作品の美点ですが、今回もさりげない伏線とロジカルな謎解きでしっかりしたミステリに仕立てています。
麻里邑圭人さんも指摘されてるごとく謎や真相の見破り方がエロマンガ的で面白いんですが、ネタ自体は実は既存の本格にも出てきたりしますよね?アレとか。ともかく、作者の新たな代表作でしょう。続編希望!


・ここのき奈緒『PIECES』


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全員妊婦さん!まずこの攻め攻めな表紙が素晴らしい。
ここのき奈緒先生の絵柄は非常に端正で華麗。その印象とヒロインたちの重そうでずっしりしたボテ腹のギャップにやられます。
また、快感によってヒロインの精神が理性の境界を超える、陶酔の演出が見事です。お話のバラエティも豊かで飽きさせません。


・無望菜志『魔剣の姫士』


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触手純愛大ファンタジーロマン。ページ数の不足から不完全燃焼に終わった『Tentacle Lovers』(2008)の完全版という趣です。
「世界と仲間を救うため多くのキャラクターが次々集まり力を貸してくれる」シチュエーション(「私を忘れてもらっては困るな!」みたいなやつ)、そこにともなう友情・愛情・熱血。
ちょっとエロマンガに載せられなさそうな感情をセックスの最中にブチ込む力技に、何を読んでるのかわからないままテンションは上がる怪作&快作です。もうちょっと長く読みたかったかも。


・高津『人妻Aさんと息子の友人Nくん』


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読んだ時、「ポスト山文京伝だ!」と思いました。
隠れてのセックス「隠姦」がテーマと帯にありますが、隠れるスリルより、セックスしながら同時に母としての顔を子供に見せる、二面性を同じ場面に併存させることがポイント。作品は引き裂かれたヒロインの内面に潜っていきます。
あと、精液が溜まったコンドームに婚約指輪を入れるシーンは間違いなく2018年瞬間最大風速記録でした。今年色々ありましたが、高津先生は実力ある方だと思いますので、復帰を楽しみにお待ちしております。


・猿駕アキ『FORK IN THE ROAD』


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「それが面白いのは知っとるわ!」と寝取られ好きの声が聞こえますが、まあ単行本で初めて読む方もいるでしょうし、加筆修正入ってますから。
名作同人誌の商業化。いわゆるマジカルチンポで堕ちるタイプの作品とは一線を画し、遠距離恋愛や社会的地位の差など外堀のすれ違いから浮気への流れを構築しています。
元はかなりラフな画風なんですが、全面的に書き直されて読みやすくなってますので、これから読む方は是非単行本版をどうぞ。


・ふくまーや『ふわとろ』


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今年一番ヒロインに魅せられた一冊。
「ザ・美少女」的イメージから微妙にズレた、しかしそのズレが最高にかわいい女の子。短いページ数の中で、彼女たちの魅力を説得する「殺しのコマ」がきっちり用意されています。
個人的に印象深いのは短編「未体験ゾーン」、一緒に突っ込みながらバカ映画を観てたらなしくずしで……というシチュが、ツボに入りすぎて思考盗聴を疑うレベルでした。


・越山弱衰『艶事に染まる』


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同人誌で見て以来待ちに待った越山先生の初単行本は期待に違わぬクオリティでした。
まず、顔や体型に憂いや疲れを感じさせる熟女さんたちのキャラクターデザインが素晴らしい。複数回射精も含むじっくりした責めに晒されて、ぐったりした彼女達を捉えた大きなコマが印象的です。
また、短編「師妻艶武」は、限られたページに「実はヒロインは間男と関係を持っているのでは?」と焦りを誘うパートをきっちり入れ込んでます。寝取られはクライマックスになる間男とのセックスシーン以外にも勘所がいろいろあって、短編エロマンガでやるのが難しい面もあるんですが、やはり定番が抑えられているとグッと盛り上がりますね。


・比良坂冬『比良坂ラメント』


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非セックスシーンにも比較的多くページを取り、人物の関係性を丁寧に積み重ねていくスタイル。同じジーオーティーの消火器先生とかにも近いです。
ただ、アール・ヌーヴォー的意匠も取り込む華美で情報量の多い画面、食人やガンアクションといったバイオレンス要素、短編のオチに見え隠れするホラーのセンス、世界に馴染めずとも強く孤高であろうとするゴシックな精神への傾倒、セリフやモノローグを多層的に組み合わせた時に難解ですらある語り口など、なかなかマニアックな世界が展開されています。
こう書くとサブカル寄りに思われるかもしれませんが、様々な要素がきちんと「強くてかっこよくてエロいヒロイン」に統合されているのが素晴らしいところ。「明らかに自分と同じものが好きな人だ」と思ったので、今後も活躍してほしい。次も楽しみです!


・可哀想『堕性イズム』


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越山先生同様、同人誌で注目していた作家さんの初単行本です。
堕胎セックスとか、部位や動きの強調のためにヒロインの体型すら変えたりとか、プレイも表現もエクストリームなのが可哀想先生。商業作でどうなるのか気になってたんですが、いつも通り超ハイテンションなエロを楽しめます(流石に堕胎はないけど)。
もう一つ本作のポイントは、熟女さんたちの年齢や性経験に関わるコンプレックスを狙ったひどすぎる言葉責め&自己卑下。みじめ可愛いヒロインさん達の中には、なんと孫にいじめられる白髪のお婆さん(短編『OVER CHANGE』)も。ロリババア以外で二世代間セックスとは……。


以上です。去年は個人的に好みなジャンルでクオリティの高い作品が多く楽しい年でした。商業から同人へという流れもあって、そろそろ同人誌は商業化単行本を待つのではなく同人誌として扱わないといけないかなという感じもします。なんにせよ、今年どんなエロマンガが読めるか楽しみです。ではでは。





あけましておめでとうございます。

2017年はひたすら原稿を書いてました。
『フィルカル』に書いた「『忠臣蔵』と『神無月の巫女』」、『ユリイカ』志村貴子特集に書いた「惰性と潜伏」、『マンガ論争』に書いた2017年エロマンガ概観、そしてまだお伝え出来ない記事が一本と、後半は(大変ありがたいことに)切れ目なく記事執筆の仕事がありました。
また前半でもブログにエロマンガ評論の記事を投稿して(傾向音『寝取られ妻との性生活』香吹茂之『美脚が欲しいんでしょ!?』、ゴージャス宝田『キャノン先生トばしすぎ! ぜんぶ射精し!!』その1その2アシオミマサト『クライムガールズ』赤月みゅうと)、文章でのアウトプットが増えた一年でした。
Webラジオ『エロマンガ夜話』『OVA夜話』での発信は今後も続けていきたい一方で、やはり整理された議論を提示するには文字のほうがよいですし、今年もどんどん書いていければと思います。

当ブログや『エロマンガ夜話』で新刊レビューをすることはあまりないのですが、毎年ベスト10は出してます。
前回まではランキング形式でしたが、今回は無理に順位をつけずベスト10を挙げます。選考基準として、エロさだけでも、いわゆる「マンガ的な面白さ」だけでもなく、エロマンガとしての総合的な価値を考えます。また、すでに『マンガ論争18』で2017年の重要作を選びましたが、そちらよりも私自身の価値観を前面に出したチョイスにしています(ただし、いくつか重複もあります)。

当然ですが、私が読んだ作品から選んでいます。網羅的に2017年のエロマンガをチェックしているわけではないので、その点ご了承ください。


・皐月みかず『君の眼鏡は1万ボルト!』


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一冊丸ごと眼鏡っ娘で揃えただけで結構なもんですが、本作の真価は、眼鏡描写をキャラクター表現にまで昇華しているところにあります。
人物の性格によってフレームを使い分け、果てはキャラクターの成長を眼鏡の変化によって可視化する……
眼鏡愛の暴走の果てに、表現としてのより普遍的な面白さまで獲得してしまった作品です。


・chin『サクセックスストーリーズ』


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お話や人物の内面といった要素は潔く切り捨て、ヒロインのボディとシチュエーションが生むエロさに振り切っています。
同人作、初単行本と比べると身体描写力の向上が著しく、この極端な戦略を支えるだけの剛腕をついに得た感があります。
エロマッサージ、バニーガールなど、AVっぽいというかオヤジっぽいセンスも憎めない一冊。


・墓場『女教師 市川美由紀』


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墓場先生は今まで、『公開便所』『けだものの家』と、物理的にはもちろん精神的にもバイオレントな、ストーリー性の強い重量級の作品を送り出してきました。
今回は打って変わってシンプルな調教譚です。その分エロ作家としての地力の高さがわかりやすく露出しています。
決定的な場面で顔を描かないなど、ヒロインを徹底的に「モノ」に擬す演出が随所で効いており、ストレートにエロい一作です。


・ピジャ『ねぇ…しよ♡』


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絵が上手すぎる。以上。
と済ませたくなるほどの画力です。読んでてびっくりした。
特に描線が絶品。太さをダイナミックに変えながらも、しかし立体として破綻がありません。奇跡的なバランス。
個性も十分で、熱に浮かされたような細目の表情が艶っぽいです。


・きい『群青ノイズ』


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絵が上手すぎる。以上(その2)。最小限のインクで最大の効果を上げるタイプの研ぎ澄まされた画風。
マンガとしての演出も巧妙です。とくに短編「-10」は、「打ち上げ花火」というガジェットにこんな使い方があったのかと唸らされます。同作では「ひゅー、ドン」と空に花開いた光は画面に一度も登場しません(ちょっと見切れるコマはありますが)。にもかかわらず花火がいかにしてロマンティックな瞬間を創造するか、ぜひ確認してみてください。


・DISTANCE『じょしラク!2 Years Later』


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女子ラクロス部のエロ騒動を描く長編作品の二作目。
前作『じょしラク』は登場キャラクターが皆愛らしく、彼女たちがわちゃわちゃしているのを見るだけで楽しめました。
今回は新入部員が登場しさらにドタバタがパワーアップ。とにかくラブコメとして愉快です。
毎回毎回の終わらせ方もヒキが強く、ついつい一気に読んでしまいます。
学生ヒロインが多く妊娠ネタをやりにくい中、唯一「孕ませOK」な熟女枠・五月先輩の再登場&再懐妊が個人的に嬉しかったです。


・ひげなむち『桂さんちの日常性活』


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ひげなむち先生の「ナガサレ」作品群には、実はアンチ「寝取られ」アンチ「堕ち」とも言える性格があります。
というのも、「ナガサレ」スタイルは、すでに十分エッチな女性に欲望を開放する言い訳を与えることに本質があるので、「かつては清純なあの子がこんなに淫乱に変わってしまった」ギャップエロとはある点でかみ合わないのです。
本作の表題作となる長編では、ヒロインが完全に「堕ちる」ことなく、破滅と日常の中間で永遠に爛れた日々を送るという、いわば「終わりのない終わり方」が選択されます。正しく「ナガサレ」の完成形でしょう。


・高津『SはフラジールのS』


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日焼け・褐色男子サイコー!待ちに待った高津先生のショタ単行本。
調教から始まるイチャラブを描いた長編作も素晴らしいですが、短編「ご主人様と奴隷の妻」にも注目したいところ。
筋肉質・褐色でセックスでは攻め役である主人公が、しかし実は受け役の色白で女性的なショタによって、無理やり犯され奴隷化されている。ありきたりな構図を裏切るエロさが幾重にも折り重ねられています。



・ビフィダス『キミを誘う疼き穴』



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おなかに力を加える「腹責め」へのこだわりや、孕ませ描写の豊富さ、「堕ち」を印象付けるための幼いセリフ回しなど、見どころは多いです。が、キラー短編「雨宿りのミカ」がとにかく良い。
自分の気持ちを表現しない(できない)野良猫のような少女ミカ。心が通じない苛立ちから暴力的なプレイに走る主人公。
コミュニケーションが成立せぬままセックスだけが過激化していく虚しさ。そして、最後の小さな数コマによってもたらされる電撃的な理解。
「ジャンクエロ」のような印象もあるエンジェル倶楽部に載ったのがちょっと驚きな、抒情性に溢れる一品です。



・児妻『金曜日の母たちへ』



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母子相姦テーマの一冊。
熟女の超豊満な身体を丁寧な陰影処理で描く。さらに構図によって肉を徹底的に強調する。特にお尻好きにはこたえられない一作でしよう。
美人でもかわいくもない、ヒロインの顔の野暮ったいデザインは、首から下のピーキーさと強烈なギャップを作ります。セックスから遠ざかっているはずの人物が実は……という、熟女・実母ジャンルのコアをわかりやすく具現化していると言えましょう。



他に印象に残った単行本としては、内々けやき『ニンフォガーデン』、りょう『キズモノオトメ』、安藤裕行『パコパコビッチ☆~メガ盛り!ましまし!ドスケベ肉』、掘出井靖水『父と娘の性愛白書』あたりがそれぞれに傑作でした。

今年はコミケで長文エロマンガ評論を集めた同人誌を出そうと思ってますので、その作業を頑張ります。2018年もどうぞよろしくお願いいたします。

エロマンガ夜話もついに30回を数え3年目に突入しようとしています。パネリストが労働の闇に飲まれて参加できないときが増えたりもしてますが、新たなゲストも迎えつつ、元気に2017年もエロマンガを語りたいと思います。

さて、ツイキャスでは既刊から作品を選んでいますし、このブログでも新刊レビュー的なことはしていないのですが、せっかくなので個人的な2016年エロ漫画ベスト10をまとめてみたいと思います。



第10位 椿十四郎『デイリーシスターズ』(ティーアイネット)

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ティーアイの近親相姦番長こと椿十四郎先生の最新単行本。
妙に生々しいエロスが漂うことで(僕の中で)定評のある椿十四郎先生ですが、今回はついに第三話で「性欲がやたら強いちょいブス」という、およそエロマンガ的でないヒロインを投入。
汗の匂いのするエロさで独自の境地を切り開いてくれました。



第9位 武田弘光『シスターブリーダー』(ワニマガジン)
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もはや安定感しかない武田弘光先生。流石の画力です。
処女作のイチャラブ路線と、同人誌や前単行本で見せた調教路線をミックスした、幅広い層にアピールする一冊。
NTRだった前単行本とハードさ・下品さは全く変わっておらず、最終的にヒロインは肉便器と化し人生を完全に駄目にしています。
本当に純愛でなのか疑わしくなってきますが、まあ幸せそうなのでこれでいいんでしょう!



第8位 香吹茂之『即絶頂』(ティーアイネット)

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この単行本の発売日が12/31だったせいでこの記事がなかなか書けなかったんだよ…



香吹先生、それも『美脚が欲しいんでしょ!?』の方の香吹先生が帰ってきました。『北斗の拳』×『修羅雪姫』型女復讐ロマン×エロマンガという意味不明な掛け算を計算してみせた先生が今回描くのは能力バトルマンガ
…のはずだったのですが最終的にマッチョの男が延々殴り合うだけのページがずっと続くというもはやエロでも能力バトルでもない異次元の展開を見せ、僕のエロマンガの定義はまた広がりました。
ますます磨きのかかった画力で描かれる女性・男性の美しい肢体に見惚れましょう。
変なエロマンガが読みたい人は必読!



第7位 秋月伊槻『催眠暗示で必ず淫靡なる』(クロエ出版)
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「催眠」というテーマを掲げた作品としては今年もっともこだわりを感じた一冊です。
たとえば、「催眠」に至る前の「会話術」を丁寧に描写する。
たとえば、「普通の催眠」から「エロ催眠」への変化と落差を描く。
たとえば、催眠の内容をコロコロと変え、相手の人格の一貫性を完全に奪う。
使い古されたテーマであっても突き詰めれば、まだまだ面白いことはできる、と思わされた作品でした。




第6位 ともつか治臣『ツリメス』(ヒット出版)
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デビュー作を読んだときからともつか先生のファンで、7年ほど単行本が出るのを待っていたのですが、ついに発売されたのがまず個人的には嬉しかったです。
プライドに縛られて素直にはなりきれないけど、相手を思いやれないほどひとりよがりでもない、そんな男女のくすぐったい恋愛模様が収められています。
つり目&巨乳のヒロインたちを描く線がまた美しい。アナログ的な質感を豊かに残しつつ、情報過多でもない描線に酔わされました。



第5位 叙火『八尺八話快楽巡り』(ジーウォーク)
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「エロスとホラーの融合」は、それこそ高橋葉介作品を始めとして連綿と伝統のあるテーマだと思いますが、
本作はその中でもかなりの成功作といっていいのではないでしょうか。
エロシーンと恐怖シーンがシームレスであり、未知なるもの・異形なるものの怖さとエロさ――「怖いからエロい」、「エロいから怖い」という逆説を見事に描いています。
また、子宮責め・孕ませ・胎児への介入などなど、実はプレイ自体もかなりハードなので、単にエロ目的で読んでも満足できるでしょう。



第4位 御免なさい『だから神様、ボクにしか見えないちいさな恋人をください。』(ジーオーティー)
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長い沈黙期間を経て生み出された傑作。
とにかく表現の引き出しが多彩で、密度も濃い。まるで万華鏡の中をジェットコースターで疾駆するような漫画です。
御免なさい先生の作品に限らず一般的な話として、個人的には口リ系の作品の中にしばしば現れる自意識の「こじれ」みたいなものがちょっと苦手なのですが、
本作は見事なバランス感覚でその「こじれ」を飼いならし、普遍的なエンターテイメントに昇華しています。
エロマンガや口リ系漫画を普段読まない人でも是非読んで欲しい作品です。



第3位 kiasa『ひなたネトリズム』(コアマガジン)
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「寝取られ」ジャンルの本質を見事に引きずり出して見せた快作です。
「寝取られ」は、主人公=読者の性的不能性を自覚させられるという意味でマゾヒスティックなジャンルであると同時に、
肉欲と倫理の板挟みに苦しむヒロインを見て楽しむという意味ではサディスティックなジャンルでもあります。
本作の主人公は最終的に、ヒロインが不貞を働くだろうことを承知の上でヒロインと結婚することを選びます。
それは何があっても彼女を愛するという決意があるからでもなく、ましてや嫉妬に燃える寝取らせプレイを楽しみたいからでもなく、
不倫をやめられない自己嫌悪と罪悪感にもがくヒロインの姿を間近で見たいからです。
一見被虐的なジャンルである「寝取られ」に潜む嗜虐性を見事にクローズアップしてみせた一作でした。


第2位 なかに『まるだしすたー』(コアマガジン)
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今時こんなに台詞がないエロマンガも珍しいのでは?というほど静かな作品。
無言・無表情(あるいは無言・変顔)のまま、兄妹が妙ちきりんな変態行為(突然洋服を鋏で切って乳首を露出する、など)に興じる様は、ぱっと読むと前衛・ギャグのようにすら思えてきます(僕が連想したのは山本直樹の『堀田』です)。
しかし本作に漂う異様なテンションは、兄妹が気恥ずかしさや背徳感を乗り越えてでも愛を伝えあうために必要な、心の"勢い"の副産物です。つまりこれは純愛の表現なのです。
必死な表情で絞り出される「すき」という一言。告白がこれほど重いエロマンガもまた珍しいでしょう。




第1位 新堂エル『変身』(ワニマガジン)

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あまりにも面白くて面白くて、はじめから終わりまで一気に読み終えてしまった作品です。
「徹底的なものだけが面白い」とはトーマス・マンの言葉ですが、
人が堕ちていくさまをこれほど徹底的に描いたエロマンガは他にないのではないでしょうか。
愚かな少女が、その愚かさゆえに、人生の階段を転げ落ち、死に向かっていく。
強烈な悪意に晒されたわけでもなく、なにか決定的な間違いを犯したわけでもないはずなのに、
一歩一歩誤った歩みが積み重なった結果、
いつのまにかもう後戻りできない場所に追い込まれ、必死にもがいてももはや上がる術はない。
その悲劇としての完成度の高さにため息が漏れます。
転落劇を彩るプレイもハード極まりなく、薬物やピアッシングはもちろん、
堕胎や妊婦に対する暴力など、もはや猟奇のジャンルにまで踏み込んでいると言っていいでしょう。
また、終盤の展開が著者の代表作『TSF物語』に酷似している――結末は全く真逆ですが――のも意地悪な魅力。
読み終えた後、あまりの闇の深さに、清々しく爽やかな気分になりました。






以上が僕の2016ベスト10です。その他、おとちち『我慢出来ない牝穴♀』、メメ50『発情警報』、Benny's『オトコノコいじり』、Clover『F&M』、あかざわRED『なま口リ』、オオカミうお『【流出】JSJCナイショの事案』、楓牙『姉の秘密と僕の自殺』、加藤茶吉『娼年インモラル』、七松建司『少年甘落』、ザキザラキ『月火水木金土えっち』、あたりも非常に楽しませていただきました。

私機能性重視が今年7月にひかけんくんとツイキャス・エロ漫画夜話を始めてはや半年。夜話を始めたことで友人と情報交換をする機会も増え、本年は非常に充実したエロ漫画ライフを過ごすことができました。

ツイキャスでは既刊から作品を選んでいますし、このブログでも新刊レビュー的なことはしていないのですが、せっかくなので個人的な2015年エロ漫画ベスト10をまとめてみたいと思います。



第10位 ぐじら『ギャルとかビッチとか色々。』(ワニマガジン)
(第11回放送作品)
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黒ギャル!!!!!俺たちの黒ギャル漫画だ!!!!!!!
ぐじら先生の初作品集。
ビッチという記号について回るビョーキ感・背徳感が徹底的に排され、アッパーで陽性、(性的に)人生を謳歌しまくる女性たちが描かれる一冊です。
「変態でも淫乱でも、誰にも迷惑をかけなければ、自分の思うように生きて、楽しんでいいんだ!」というポジティブなメッセージをもらえます。



第9位 成島ゴドー『…そして母は牝になる』(ティーアイネット)
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成島先生の前二作から現れた、「少女のような可愛さと、トラブルに折れないしたたかさを併せ持つ熟女さん」の魅力が爆発した一冊。
プロットは典型的な母寝取られものなのに、なぜか家族の絆が強まって終わる、不思議な爽やかさのある作品です。
エロも濃い口。



第8位 流一本『姦用少女』(ヒット出版社)
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短編集。
近親相姦や寝取られといった流一本先生十八番のテーマはもちろん、「百合の間に割って入る作品」が二本も収録されています。
特に「ゆり姦」前後編は、幸せだったはずの百合カップルが、「男に犯され=求められる」ことですれ違っていく過程を描いた傑作です。



第7位 青山哲『ここはビッチ街』(ティーアイネット)
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マイケル・ベイかよ!!!と突っ込みたくなる、超情報過多な一冊。
読んでてこんなに疲れるエロマンガは生まれて初めてです。
前作はひねったシナリオが魅力でしたが、今回はとにかく攻撃的なビッチとの乱交!乱交!また乱交!というストロングスタイルでした。これがブロックバスター・エロマンガだ!



第6位 KANZUME『ぽちゃワキびっち』(エンジェル出版)
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個人的に今年の新人賞はKANZUME先生ですね。第7位に続いてエロに絞ったストロングスタイルの作品。
いかにもエンジェル的なコクとアクのあるエロ描写(脇毛、ぽっちゃり、爆乳など)と、間口の広いアニメ的なキャラクターデザインを兼ね備えており、バランスがいいと思いました。
あと、孕ませネタが多いのも個人的にツボでした。



第5位 レオパルド『Hスケッチ』(ワニマガジン)
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黒ギャル!!!!!俺たちの黒ギャル漫画だ!!!!!!!
とにかく巨乳!巨尻!を楽しめる作品。
パーツを強調するために極端なパースをつけつつも絵は崩さない、デッサン力の高さが光ります。
また、一度口リを書くとこんどはガリガリ・スレンダーなのも素晴らしい。どちらの方向でも、やるなら徹底的に!というサービス精神に頭が下がります。



第4位 西安『ペンギン王国・学園初等部先生のおしごと』(茜新社)
(検閲)



第3位 鬼ノ仁『僕の麻利恵さん』(ティーアイネット)
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(女子校生がメインであられる)鬼ノ仁先生の熟女作品というだけですでに100点ですが、今作はそこに複雑なストーリーの魅力が加わって1億点です。
「友人の母との不倫もの」という定番のプロットで始め、成長忌避・田舎の閉塞感というリアルなテーマを絡めながら、ラストは打って変わって幻想的に締める。
とてもドラマティックなエロ漫画でした。



第2位 墓場『けだものの家』上下巻(ティーアイネット)
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今最も暴力的なエロ漫画を描けるのは墓場先生だ、そんな確信を与える作品。
水攻め・殴打・絞殺といった行為自体も確かに痛ましいものです。
しかし、不条理にさらされたヒロインの「恨み」と、その果てに現れるドス黒い「殺意」こそが、この作品における最大のバイオレンスです。




第1位 月野定規『ボクの弥生さん』(ワニマガジン)

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今年1月に読んで、「あー、今年はこれを超えるのは出ないだろうな……」と思ったら本当にその通りだった一作。
月野先生はもともと「寝取り」漫画の名手です。
今回は”子宮を躾ける”調教のねちっこさはそのままに、読者の心を折る鬱展開がきっちり入れ込まれており、単に構図を逆にしただけではない「寝取られ」漫画になっています。
特に、「主人公の家に寝取り男が居候して、朝から晩までヒロインを調教している。主人公はそれを知っており、ヒロインもバレていることを知っているのだが、どちらも怖くて言い出せない」という終盤のシチュが最悪でサイコーでした。
家宝にします。



以上が私の2015ベスト10です。その他、駄菓子『契りの家』、荒井啓『放課後initiation』、Fue『フェラハメりっぷす』、チバトシロウ『あにまる・あそーと』、ザキザラキ『ハメ好きッズ』、篠塚裕志『ヒトヅマライフ』、あたりも非常に楽しませていただきました。
あと、今年読んだ過去作のベストはぶっちぎりで香吹茂之『美脚が欲しいんでしょ!?』。オールタイムベスト級です。いずれ紹介記事書きます。


なおこの記事を書く前にへどばんさんgosplanさんカシワナギさんエロピニさんのベストを拝見しましたが、見事に被らないんですねこういうの。ここまで主観がバラバラであることを思うと、エロ漫画についてなにか語ることの難しさを感じます……


来年もよいエロ漫画に巡りあえますように~

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