毎週金曜日更新のエロマンガ時評企画。取材とか原稿で忙しくてこの前まで2週連続で休んじゃいました。てへ。今回はおたらい零『女教師5人と僕1人』を取り上げる。

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「おたらい零」はAV化もされた人気作『相姦のレプリカ』を手掛けた「御手洗佑樹」が、ティーアイネットで活動を始めた際に新しく採用したペンネームだ。この名義では今作が2作目にあたる。

あらすじを説明しよう。巨大企業体天堂グループを父から受け継ぐべく英才教育を受けている少年・天堂光一郎が主人公。彼は成績トップクラスにもかかわらず、「帝愛学園」(ティーアイネットのもじり)なる学校での補修合宿に行くことを父から命じられる。そこで待っていたのは、将来この国を支配するにふさわしい男として、童貞の彼を性的に鍛える熟女女教師たちだった。所詮子供だと天堂を舐め切っていた彼女たちは、彼の意外な成長と対応力の高さに次々と堕とされ生中出しを許していく。そしてついに、絶対不感症の学園長との一騎討ちが始まる……

さて、多分エロマンガ好きがこの本を読んだら確実にピンとくると思うのだが、おそらく本作は月野定規の作品を下敷きにしている。セックスと縁遠かった主人公が、エッチでマゾい女たちにご主人様として鍛えられ、最後にラスボスである女教師(子宮姦が弱点)との決戦に挑む……という流れは、名作『星の王子サマ』に近い(ちなみに同作は、これまたエロマンガ史に残る作品、山本直樹の『BLUE』が多分元ネタである)。相手が全部女教師であることから、『アフタースクール』もちょっと入っていると言えるかも。

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蕩かされて疲れ果てた人妻が気怠そうに「扉が開いた状態で…中出しされたら…ダンナとSEXできなくなっちゃうだろーが…」と呟く、こういうセリフのセンスも月野定規っぽい。

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(下は『星の王子サマ』)

月野生理学と、「鍵」をめぐる攻防

ストーリーの構図や、ちょっとしたセリフに止まらない。月野定規作品最大のトレードマークである、「月野生理学」もまた本作に継承されている。

「月野生理学」というのは私の造語で、月野定規作品世界にのみ通用するセックスに関する生理学的な法則のことを指す。月野定規のマンガでは、セックスはしばしば性技によるマウンティングの取り合いの様相を呈する。性技といっても、腰の動きがすごいとか、責めがねっとりしてるとか、そういう話ではない。相手の体をどういう順番で、どう責めれば、子宮を無防備にし、精液の味を覚えさせられるか……。相手の体を支配する生理学的な法則を理解し、その理解によって相手の身体を思うままに操作する。ヒロインの体はどこまでも自然法則の奴隷であり、同時に自然法則を利用する主人公の奴隷であって、ヒロインのものではない。それが月野定規のエロを支える世界観だ。

例えば『残念王子と毒舌メイド』では、主人公が子宮口を堅く閉じて守ろうとする生意気なメイドに対して、「解錠作業」を施す。アナルから子宮を突き、同時にクリトリスを責める。イッて無防備になったところで、腸壁を挟んだちょうど裏側から子宮に精液を浴びせかければ、彼女の子宮口はついに開いている。あとはそこを突き、精液を卵子に送り届けるだけ……。重要なのは、この手順を踏めば相手の体を堕とせるという理屈を、実況中継のように主人公が解説していくところだ。これによって、相手の体を司る法則を主人公が完全に理解し、思うままに操作しているということが強調されている。

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『女教師5人と僕1人』も、手順を踏んでヒロインの体を開かせていく過程を、背後にある理屈と共にじっくり描いている点で月野作品と共通する。その上で本作ならではのポイントは、身体の支配をめぐる駆け引きを、「鍵」の解明という仕方で整理したことだろう。本作においては、人は皆、自分の体を開かせてしまう「鍵」を持つ、という理論(おたらい生理学?)が、女教師から天堂に教えられる。だからセックスバトルは、相手の「鍵」を突き止め、そこを的確に責めていく過程となる。月野作品に比べると、焦点が明確で話がわかりやすいこと、そして「鍵」を見つけるまでの、試行錯誤と探索の過程も大きな見所になっていることが違いと言える。

例えば体育教師の柴田みゆきとのセックスでは、主人公がいろんな体位を試し、なんとなしに尻穴を責めたところで「鍵」が見つかる。「おしっこ!?すごい汗!!それに筋肉のこわばりと声が変わった!!……これって!!」「膣内から愛液が噴き出して!!肉がグニャグニャにとろけてる!!」「正解だ!!直腸の肉を下に押し潰す!!肛門に入れてる指でチ○ポの動きがわかる!!」バトルマンガみたいな実況は月野定規っぽいのだけれども、既に知識を持っている側の一方的マウンティングではなく、成長途上の主人公が相手の女性を初めて理解した快感・征服感が表現されている点は本作独自の魅力と言えるだろう。

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もちろん、画風の面でもおたらいの方がより劇画的なので、ファンタジックな性技の応酬をよりリアルな絵で見られるという楽しさもある。そこも含めて、月野定規的なエロが継承され、また別の仕方で進化していく可能性を感じさせてくれる一作だ。月野ファン・おたらいファン、熟女好き・女教師好き、性技バトルもの好きは必読。