弊サークル「夜話.zip」のC97新刊エロマンガ評論本は『〈エロマンガの読み方〉がわかる本3』と題し一冊まるごとchin先生を特集します。今回は記事の中から、chin先生のロングインタビューを先行公開します。


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chin作品といえばシュールでコミカルな台詞回し、いわゆる「種付けおじさん語録」が有名です。しかしそれも、 chin先生の、「エロへの情熱」の現れなのです。今回のインタビューでは、先生のエロマンガに対するストイックな姿勢をお聞きできました。


ちんは「珍」で、奇行が目立つからと


――ペンネームの由来からお願いします。コミックアンリアルに掲載されたインタビュー(2019年4月号)によると、学生時代のあだ名が元ということですが。

 本名とは関係なくて、学生時代に「ちんさん」っていつの間にか呼ばれていたんですよ。卒業後に友達に聞いたら、ちんは「珍」で、奇行が目立つからと。すごいショッキングな名付け方でした(笑)。学生時代変わったやつだったんで、そう呼ばれていたんでしょうね。ただペンネームを単純に「珍」ってすると外国の人って思われるかなと。じゃ、かっこよくアルファベットにしたらいいんじゃないかと思って。

――マンガを描き始められたきっかけは?

 中学校のとき、友達とマンガみたいなことをしてみようってノートに『ドラえもん』のパロディを描いてたんですよ。みんな描くじゃないですか、そういうの。二、三ページですけどストーリーもののマンガを描いて、周囲に見せたりしてウケてたんですよね。ある日、本当はマンガってどうやって描くんだろうって調べたら、画材を買わなきゃダメだと。原稿用紙を用意して、下描きして、つけペンでペン入れするってことはわかったんです。すごい田舎だったんで、友達と二人で自転車で一時間くらいかけて買いに行って、つけペンを使ったらめちゃめちゃ難しくて。それでいっぺん挫折するんですね。

そこから改めてマンガを描いたのが高校くらいのときかな。可愛い系のイラストを描いてたんですけど、見せるの恥ずかしいじゃないですか。こんな男らしい俺が、こんな美少女を描いてるのは恥ずかしいって(笑)。それで隠れて描いていたんですけど、想いが溢れちゃって次第にマンガにしたくなって、下手くそなイラストを描いて友達に見せてたんですね。全然自分の理想通りに描けないから、どんどんのめりこんじゃって、こうなっていました。

――元からマンガはお好きだったんですか?

 中学生くらいのときから結構好きだったんですけど、部活の野球部が忙しくて、あまり読む時間がなかったんです。中学校のときに『HUNTER×HUNTER』(1998〜)を読んですごく感動したのは覚えてます。ジャンプは結構読んでいましたし、マンガは好きなほうだと思います。あと野球マンガ。『キャプテン』(1974~1980)はめちゃくちゃ好きで、何回読んだかわからない。ただ少年マンガは好きですけど、自分のマンガのエキスにはなっていないですね。ああいう話は描いてみたいとは思うけど、今やっているジャンルには持ち込んでいないです。

――アニメもお好きでしたか?

 そうですね。ただ田舎だったんで深夜アニメとかが入らない(笑)。「深夜アニメ」っていう文化をまず知らない。でも高校時代になるとインターネットが発達してきて、ニコニコ動画が出始めるんです。それでいろんなMADが出て、その元ネタはなんだろうと思って、『ハルヒ』などに触れる。こんな面白いものがあるのかと、地元に一軒あるアニメイトで円盤を買ったりして、だんだん知っていきました。

――高校のときに描いていた美少女とは?

 やっぱり『ハルヒ』の長門有希とかでしたね。あと二次創作を描いてみたいって最初に思ったのが『ひぐらしのなく頃に』ですね。田舎の因習によってお互いが疑心暗鬼になっていくという、キャラクターの濃密な関係性をノベルゲームで描いている作品に人生で初めて出会ったんです。めちゃめちゃ長くて、すごく細かいところ、気まずさとかが伝わってくる。その関係性の延長線上で妄想するっていうのがすごく楽しかったです。


火田先生の小説と出会う


――同人活動を始められたきっかけは?

 『東方Project』を知る前に、友人に東方オンリー即売会の紅楼夢に連れて行かれたことがあって、こういう同人誌を売るイベントがあるんだっていうのを初めて知って。それが東方を知るきっかけだったんですが、自分の作品を他人に見せるのが好きなので、こういうイベントにいつか出てみたいと思ったんです。同人誌の作り方を一からネットで調べて、最初に印刷した本が『鉄平』(2009)です。当時はHEVOというサークル名でした。

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『鉄平』


――一般向けの『ひぐらし』本ですね。主人公は北条鉄平で。

 三枚目キャラがすごく好きなんですね。『幽☆遊☆白書』(1991~1994)の桑原とか、『ハンター』ならレオリオとか。ぱっと見、一番最初に死にそうなやつが活躍する話が好きなんです。北条鉄平は三枚目以下じゃないですか。『ひぐらし』ってパラレルワールドなので、鉄平と(北条)沙都子が仲よくなっている世界線もあったんじゃないかと。それを実際に描いた派生作品があって、それを読んで、俺もこんなの描きたいなと思った感じですね。

――そこからしばらくして、ちんちん亭というサークルで成人向けの活動を始めてらっしゃいます。

 その前にHEVOで『東方』の健全本も出したんですよね。伊吹萃香メインのギャグマンガを二冊と、比那名居天子でギャグを一冊出しました。そこで『ひぐらし』から『東方』に移行しているんですね。そうしたら読んでもらえない(笑)。

『鉄平』はコミケで30部くらい刷って完売したんです。絵はド下手ですが話が突飛だったので、女性の方がすごく買って行ってくれて。初めての同人活動で「鉄平で活動している人初めて見ました、これからも頑張ってください」って言われたのが強烈に頭に残って、すごい嬉しかったんですよ。

それが成功体験としてあったんですが、その後がどんどん下り坂になっていくんです。見てもらえないなって、テンションが下がるわけですね。情熱の向けどころがなく悶々としているところで、火田さんという方が『東方』のふたなりエロ小説を書いていたんですよ。それを読んですごくエロいなと思って、この小説を絵に起こしたいなと描いているうちに、情熱がどんどん高まってきたんです。描いてみると結構見てもらえるし、楽しいなって思い始めたんですね。それでエロ同人を出すんです。気分転換として、サークル名も変えました。

――火田先生の作品はヒロインのセリフだけで進行しますけど、あまりにも卑語の量が多いので、ちょっと面白いというか、笑っちゃうような言葉も出てきたりしますよね。少しchin先生に似たものを感じました。

 私はそれをとてもエロいと思っています。火田先生が元祖で、僕はそれに影響されていますね。


AVのパッケージが好きで


――自作の中で一番気に入っているものはなんですか。

 基本的に最新作を一番気に入りたいですけど、そうもいかなくて。いまだに超えていない、一番気に入っているのは『ラブラブ龍魚と下品なアクメ』(2017)。同人誌ではこれですね。自給自足が唯一できるのがこれなんですよ。いまだにシコってます。最近の作品だと唯一のラブラブものなんですが、女性がなんの憂いもなくアクメに没頭している姿を一番よく描けたかなという。エロコスプレと、密室で二人きりでセックスっていう僕の二つ好きな要素だけ詰め込めた。あと肉感の表現とかもこれが一番自分で気に入っているかな。この作品のやり方を今でも参考にするときがあります。商業誌だと、『サクセックスストーリーズ』(2017)の「オヤジとメスの夏休み」という寝取られものですね。

――先ほど肉感表現の話が出ましたが、初期の作品から一貫してむっちりしたヒロインが描かれていますよね。たとえば『ヌキヌキ娘々』(2012)でも、お腹と背中の肉のたるみがすごい。そこから、厚みを感じさせる描写に変わっているかなと思います。

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『ヌキヌキ娘々』。お肉のたるみ方に注目。 引用にあたり修正を追加した


 見直していくにつれて、違和感が出てきたんだと思います。自分の中で最高の肉感表現ができるようにと思って常にやっているんですが、それをいまだに追い求めています。

きっかけとしては商業誌に描き始めたっていうのがあって。同人誌の頃はマンガを甘く見ていて、なにも見ずに描いていたんですよ。自分の中の想像だけで描いてた。そうするとこういう肉感というか風船みたいな感じになっちゃって。商業誌で描き始めることによって、編集さんからものを見て描かないとダメだよとか当たり前のことを指導されていくうち、本当の女性の肉はこういう付き方しているんだって勉強するようになったのかもしれないですね。

――実物を見て絵の練習をされたということでしょうか。

 グラビアの写真とかを模写したりしましたね。特にAVのパッケージが好きで、模写しますね。情報量がすごい多いんですよね。中身を見てもらうために様々な工夫が凝らされているんです。だから模写しがいがあるんです。おっぱいおしり二つとも映るように構図を決めたりとか、すごく勉強になる。あと現実離れした肉体の方が多いので、マンガの練習になるし。

――実際に作品を描かれているときもAVから着想を得たりすることはありますか?

 影響はされていると思いますね。『むっちりと柔らかいゆゆ様を催眠で』(2019)だったら、明確に参考にしたのがこういう体位。立側位みたいな。これはAVでよく用いられるんですよね。全身が見えるから。あとたとえば総集編Vol・2(2018)の描き下ろしのこのコマも、AVリスペクトですね。

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『むっちりと柔らかいゆゆ様を催眠で』。全身が映る、AV 風の体位


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総集編より。フェラチオAV で見られるアングル


黒い絵、エロいじゃないですか


――肉感の表現で言うと、トーンの使い方もどんどん変わってますよね。たとえば1冊目の総集編の中だと、最初の衣玖本(『OL龍魚の種付け日記』(2013))だと単に影を付けるっていうくらいだと思うんですが、『ムチモモ援交クイーン』(2014)とかになってくるとラストのコマとか、かなり細かくグラデーションで表現するようになっていて。2冊目の総集編で『火焔猫燐集団愛撫』(2016)だとトーン削りですよね。そして最近では、2種類以上のトーンと削りを組み合わせてます。

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『ムチモモ援交クイーン』。お尻の影に注目。引用にあたり修正を追加した


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『火焔猫燐集団愛撫』。削りによるグラデーション


 最初のなにも知らない頃はとりあえず影をおいとけばいいやみたいな感じでポンとおいてたんです。当時はグレースケールを使っていて、塗り込もうと思えば際限なく塗り込めるんですよ。でも面倒臭いから、最初は基本的に一影のみでやっていて。そこから『ムチモモ』のときは塗り込んだほうがエロいなとなって、グレースケールで塗り込める限界までやって怒涛のように疲れたんです。そこでコミスタからクリスタへ環境を移行するときに、トーンの貼り方を一から勉強したんですが、網点トーンで影を付けて削りブラシで削ればグラデーションっぽくなるよっていうのがあったので削ってみて、ああ確かにグレスケとあまり変わらないなってなって入れました。これ以降は基本モノクロ二階調です。また、いつもは一人で描いてるんですが、『永琳先生処方ミス』(2018)『清く正しくたのしいしょくば』(2018)のとき、忙しすぎてアシスタントさんに頼まないとどうしようもなくなったときがあって。手伝ってもらったときに、アシさんの影の付け方がいいなと思って、どうやってやってるんですかって聞いて、参考にさせていただきました。そのアシスタントさんは網点トーンをずらして重ねてグラデっぽく見せるやり方を使っていて、採用したんです。ですが、今度はやりすぎてしまって逆に濃すぎて見えづらくなった時期があって、今、『世話焼き中出し魔法使い』(2019)なんかでは抑えて使っています。

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『 蓮子潜入!催眠バニーガール』(2019)より。お尻の影に3 種のトーンが使われている。



女性がおまぬけなほど僕は抜ける


――総集編Vol・1に含まれている、『土下座メイド』(2013)あたりの作品から、chin先生作品の王道のようなものができてくる気がするんです。『土下座メイド』を例にすると、三億円のツボを咲夜が割っちゃうというわかりやすい導入があって、その償いだって無理やりヒロインを犯す竿役が出てきて。最初ちょっと長めにセックスがあって、その後コスプレを変えながら短めのセックスが続いていく。

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『土下座メイド』よりスムーズにツボを割る咲夜


 マンガの展開のさせ方がなんとなくわかってきたんでしょうね。起承転結でプロットを立てたときに、わかりやすい起があって、それが三億円のツボで。自分の中ではエロマンガの起承転結って起承転承転承転承転承転ってドドドって続いて結、と思ってるんですけど、その起がわかりやすく短いほうがいいと思っていたんです。  短いセックスが続くっていうのは、自分が好きなものを詰め込んだ結果、自然にそうなったんですよ。エロ水着が好きすぎていろんなコスプレをさせたいが故にそうなったんです。

――「三億円のツボ」はあまりにわかりやすくてちょっと笑ってしまいます。安直すぎてコミカルな導入は後の作品にも出てきますよね。

 基本的にギャグも好きなのですが、エロの中でギャグを入れられたら僕は萎えるんで、エロシーンでは入れないようにするんです。でも導入って容赦なくギャグ入れても大丈夫なんで、入れどころって思ったんでしょうね。いつもギャグを入れようと考えてるわけではないですけど、女性がおまぬけなほど僕は抜けるんで、エロく描こうとするとやっぱり導入もおまぬけにしちゃうな。強いくせにこんな抜けてるせいで、お前は今からやられるんやで、みたいなのが好きなんでしょうね。これも自然にそうなっちゃいます。

――同人誌『幻想催眠』シリーズ(2012)から作風の影響を受けたというお話を事前にお聞きしましたが。

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『 幻想催眠2』(2012)より。スムーズに催眠にかかる咲夜


 すごくリスペクトしてるんですよね。サークル腹痛起こすの悔王先生の作品って、やっぱり起が少しコミカルなんですよね。『幻想催眠2』など今見たら、僕の好きなものが全て詰め込まれている。あと、この本は多キャラですけど、一人を取り上げた作品でもシチュエーションがパンパン切り替わるんです。そのあたりはリスペクトさせて頂いてます。


セックス用の汚らしいおじさん


――今chin先生って言うと種付けおじさんのイメージがあると思うんですが、読み直すと意外なのが、初期の作品では竿役に顔がないし、結構さっぱりしている若者も出てくるんです(図15)。一方で商業作になるとはっきりおじさんおじさんした顔が出てくる。おじさんの顔こそメイン、というように見えるコマもあります(図16)。

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『 衣玖さんと強制セックスレッスン』(2014)より。作中でも「イケメン」と言われる竿役


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「 離島の女医はヌキヌキもお仕事」(『種付け!プレスプレスプレス』所収)より、迫りくるおじさん

 東方の二次創作を描くときは、目を描いてしまうと存在感があってそういうオリキャラなのかなってなってしまう。目のないおじさんなら記号になって、邪魔にならないけど存在はある状態になると思うんです。商業誌のほうは、まず最初に編集さんから「目なしはないよね」って言われたんです。オリジナルだから竿役にもキャラ付けがあったほうがいいよってことなんでしょうね。「離島の女医はヌキヌキもお仕事」のおじさんは、麗しい女医が高い志を持って離島にやってきたところをこんなに汚らしいおじさんに今からやられてしまうんだというのを表現したかったんですが、今見ると顔がめちゃめちゃでかいですね(笑)。

――「人妻だいすき!ひろゆきくん」のひろゆきくんとか、おじさんじゃないけどすごい顔ですよね。

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「人妻だいすき!ひろゆきくん」(『種付け!プレスプレスプレス』所収)より、クリーチャーのようなひろゆきくん。引用にあたり修正を追加した


 自分で描いてて気持ち悪すぎて、逆にはまった(笑)。今だったら多分描けないですね。あまりにもアクが強すぎるので。

おじさんを出すと、美醜の対比がいいんですよね。目なしの青年は清潔感があるじゃないですか。それってギャップが出ないんですよね。脂ギッシュなおじさんと、美女の対比が描きたくなって、同人でもおじさんっぽさを出すようになったんでしょうね。

ただ、こってりなおじさんを描くときに注意していることがあって、あまりにも汚らしくならないことですね。個人的な性癖として、トイレでセックスが苦手なんですよ。AVとかでトイレの床でやられてるとか、自分は苦手なんです。根底に清潔感が欲しい。チンカスまみれのちんこは不衛生だなと思って抜きに集中できなかったりするんですよね。セックス用にちゃんと用意された汚らしいおじさん、という感じで、清潔感を演出するように僕はしていますね。トイレも、セックス用に用意されたトイレだったらいいかもしれないです。


ここに一緒に肩を並べて描ける


――清潔感と言うとたとえばどんなところに気を付けてらっしゃいますか。

 あまりにも毛むくじゃらにならないとか、ハゲもあまりにも散らかしたハゲにしないとか、体を洗っていないとかそういう表現はしない。おじさんが臭いのは、とんでもない中年オヤジの濃厚な性欲の香りが漂ってくるのは好きなんですが、風呂に入っていない垢まみれの臭いがするとかは嫌なんですね。モグダン先生とか、おじさんが出ても清潔な感じですよね。汚い部屋でも綺麗に見えるようになってるといいかなと。

それと、おじさんからの言葉の暴力が多少あるから、肉体的にひどいことはセックス以外、平手打ちとか鼻血を出させるとかは自分の作品ではしないかなと。丁重に扱って気持ちよくなってもらわないといけないし、自分も気持ちよくなる。相手を見ながらおじさんが調整していくってことですね。

あとおじさんいいなと思ったきっかけは、サテツ先生かな?「SOS」(『Servant Of Servants』(2013))で気絶するほどシコったんですよ。これはマジで名著ですね。これはお兄さんなんだけど、ちょっとおじさんに近いところをいっている。これはもう伝説の名著で、イベントで買って即、シコれすぎて感想を呟いたら、まだ僕が誰にも知られてなかった頃なんですが、ツイートがアキバblogさんにとりあげられて、chinさんも絶賛みたいな感じで、謎の一般人が絶賛してますみたいな体(笑)。他の本では汚いおじさんを出されていて、すごい好きなんですよね。

――サテツ先生と彩社長先生の合同本とかすごいエロかったですよね。

 自分のルーツの一つですね。彩社長先生も今アズレンなどでとてもエロい本を描かれていて、億で抜いてます。それで、お二人も描いてた『幻想郷に種付けおじさんがやってきたYA-YA-YA』(2015)っていう同人誌があるんですけど……

――東方ジャンルのアベンジャーズみたいな合同誌ですよね。

 すごいですよね。主催者さんの胆力です。オールスターで、ひとつの達成感すらありますよね。ここに一緒に肩を並べて描けるっていう喜びがありました。参加されていた先生達がみんなレジェンド級の東方絵師さん達で。それで、なんでメインが種付けおじさんかっていうと、主催者さんが僕にインスピレーションを受けてくれたんです。chinさんの種付けおじさん面白いんでコンセプトにしましょうってなったんですよ。

――chin先生がいなければこの伝説的名著は存在しなかったわけですね。

 ルーツの人達と肩を並べられたのでよかったですね。


エロいと思わないことはしない


――おじさんから「語録」の話に移りたいんですが、「死ね」って言ったり、乱暴なことを言うと同時に優しい言葉をかけたりとか、いわゆる「語録」らしきものは『ムチモモ援交クイーン』あたりにもう出てるんですよ。最初から面白いセリフを書こうという意識をされていたんですか。

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優しい口調と乱暴な口調が同時に出てくる例。引用にあたり修正を追加した


 2014年からやってるんだと思ってびっくりしたんですけど、基本的には意識したことはないですね。「死ね」って書こうと思って書いてなくて、セリフのテキストを打っているときに、リビドーに任せて書いてたら自然と死ねって言ってたみたいな感じで、とんでもなくノってて。ぬえちゃんとセックスしていて、嗜虐心と可愛がりたさの二律背反の中で戸惑いながら書いたみたいな感じだと思います。これはギャグじゃなくてマジです。

どんどん自分の気持ちが高まりつつ書いていってて、だんだん大きくなっていくわけですねこの二律背反が。可愛いのにアクメ死んで欲しいんだ、どうしたらいい、ってなるんですよ。本当に死んでほしいなんて思ってないんですけどね、天にものぼる心地でいてほしいと思うわけです。それに加えて女の子に無様なことをさせたい、俺を勃起させろみたいな気持ちも出てくるわけじゃないですか。だからポーズとっているときにもなんでそんな下品な体をしているんだ、俺への当て付けか、とか、そういうセリフがぼろぼろ出てくるようになってくるわけです。憎たらしいんでね。まぬけな格好しやがってみたいな、どんどん罵倒の言葉が出てくる。でも罵倒するばっかりだとダメなんですよ、愛でないといけないっていう感じで、「国宝」「文化遺産」みたいな感じの言葉がどんどん出てくるんですね。そうするとだんだん語録みたいな感じになっていってしまって。2016年くらいにそれがピークに達するわけですね。この頃は本当に書いてて楽しかったですね。

今は語録botや改変などもあって、みんなが話題にしてくれるのはとても嬉しいですし、周りからの期待もわかるんですが、でも自分の中では変わらないポリシーがあって、エロいと思わないことはしないというのがあるので、面白半分で受け狙いみたいなのはないです。

――あくまでエロとして出てきたものということなんですね。

 この話は本当に喋りたかったんです。Twitterでは言えないので(笑)。でも本当にエロいなと思って書いているんで、みんなもエロいなと思って読んでほしいっていう気持ちがあります!

サンプルはここまで! インタビューの続きは『〈エロマンガの読み方〉がわかる本3』でどうぞ。メロンブックスとらのあなに委託中!

(本記事の引用図版は即売会で頒布する書籍版と同じものを使っているため、即売会の基準を意識した修正が追加されております)