新野安と夜話のブログ

新野安がマンガやエロマンガについて文章を書いたりするブログ。Webラジオ「エロマンガ夜話」「OVA夜話」の過去ログ紹介も。

2022年01月

2021年は体調を崩し、心療内科のお世話になったりしていろいろ大変でした。ブログ毎週更新は続かなかったものの、いちおう同人誌を一冊作れたし、『エロマンガベスト100』の商業化企画も進んでいるし、それなりに不調をやり過ごしたのではないかと自分では思ってます。2022年はペースを取り戻したいところ。

あと関係ないですが、2022年から「エロマンガ批評家」という怪しすぎる肩書きを名乗ることにしました。Twitterのプロフにも東大卒であることを書き加えたり。もう俺も30なんだよ。なりふり構ってらんねえんだ。

さて、恒例のベストテンです。『ゲームラボ』にも似たような記事は書きましたが、サークルとしての連名だったし、商業単行本のみという縛りもありました。今回は純粋に私・新野安の独断と偏見で、同人誌も含めて10本を選びます。例年通り順番は付けません。

昼寝『一昼夜』

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発売は2020年ですが、発行は2021年なので許してちょ。

怨念すら感じさせるほどに緻密な体の作画と、思い切りよく簡略化された顔の作画。筋骨隆々の竿役と可憐なヒロイン。極端な対比が印象的な単行本。特に冒頭に収録された、魚眼レンズ&主観だけで通した一作に驚かされました。

世徒ゆうき『千歳』

千歳

あの!世徒ゆうきの!NTR!BSSですよ!

プロットには「カラミざかり」の影響が濃いですが、流石の画力、二番煎じにはなってません。 ヒロインの顔をあえて描かない構図が多く、雑に撮ったハメ撮り的なリアリティがあります(実際、ハメ撮りそのものも出てきますし)。

そうしてさんざんタメたあと、目の前で思い人のアヘ顔を見せつけられる最終話。ほんとエロかったです。

40010試作型『プロトタイプロリータ』

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シチュエーション面で言えば今年もっともトガった一作だと思います。

自分はセックスを盗み見ているのか?セックスを見せつけられているのか?あるいは、彼女が盗み見るように仕向けたのか?盗み見ている様を盗み見られているのか?

見る-見られるが無限に階層化する目眩のようなエロさ。その果てに触れえない存在として浮かび上がる少女が、実にLO的と言えるかもしれません。


西安『どこかの部屋で』

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まぐろ帝國『あなたの奥さん浮気してますよ』

あなたの奥さん浮気してますよ

あえて2作まとめて。『千歳』も合わせてですが、今年はベテラン作家さんの凄さを改めて実感した年でした。

話的には特別なところはないんですよ。息子を交換するスワッピングプレイとか、温泉宿でのNTRとか。でも、描く技術があまりにも卓越していて、達人だけが入れる領域みたいなのを感じます。枯れてるわけじゃないんです。技術に裏付けられた前衛というか。

具体的にはコマ割りが非常に大胆。例えば『どこかの部屋で』であれば、ついに実の母親にセックスしようと申し出る、その瞬間に1ページまるまる使っています。『あなたの奥さん浮気してますよ』では、人妻がちんぽに囲まれ放心する様子に見開きを当てています。具体的な快感ではなく、その「予感」に大ゴマを当てているわけです。実に贅沢だと思います。

サガッとる『夏艶母姿』

夏艶母姿

これもエロかった!

NTRものなんですが、NTR好きがこだわりがちな「過程」をバッサリカットし、堕ちに堕ち切った人妻たちの痴態だけをこってりと楽しめます。コロンブスの卵。

RAITAばりの爆乳スレンダーヒロインたちの、あまりにも見事な堕ち方を見ていると、尊敬や憧れの念も湧いてきます。特に表題作に登場する智有希さん。間男とズルズルとセックスしまくった後、息子に親子愛爆発で寝取り返してもらえて、最高じゃないでしょうか。

皐月芋網『ツマフェス』

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種無しの夫が兄弟に妻を抱かせ、子作りしてもらう寝取らせもの。なんですが、背徳感はあくまでスパイス。最初恐る恐るだったヒロインが、だんだんノっていく様が楽しくエロいです。夫への愛も変わりません。

徹底してヒロイン視点だし、竿役もイケメンやショタだし、とにかく明るくカラッとしてるので、普段エロマンガを読まない女性にもおすすめできるのではないかと(勝手に)思いました。

FAKE庵『バトルティーチャー龍子 5』

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ここから同人誌。

FAKE庵さんの作品は、「戦闘力も精神力もめちゃくちゃ強いヒロインが、目的のためにぶつくさ文句を言いながらセクハラされる(けど、堕ちない)」のが持ち味。

しかし、本作は違います。催眠によってヒロインの龍子が完璧に性奴隷化されます。それどころか、竿役は家に上がり込み、ソープで働くよう強制し、カードを使い込んでしまいます。人生を完全に奪われてなお、ヒロインは快楽に溺れ、ついには心まで堕ちる。普段負けない強いヒロインだからこそ、破滅がショッキングでエロい一作です。

こむそう(人力社)『染井ユキまとめ集』

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パトロンサイトの内容をまとめたCG集なのでエロマンガと言えるか微妙ですが、むちゃくちゃ刺さってしまったので紹介させて!

最近僕のなかで盛り上がってる性癖が二つあります。一つは濃いリップが塗られた厚ぼったい唇。もう一つは、年齢をイジられる(ないし年齢を自己卑下する)熟女。本作はこの二つのフェチがフルパワー全開です。

特に、白黒の中で唇だけカラーにする手法がよかった。日本のマンガ絵って基本、口を線で描くので、唇がエロい作品は貴重なんですよね……。

ディープバレー(グレートキャニオン)『淫行教師の催眠セイ活指導録 総集編 一学期』

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2018年から刊行されているシリーズの総集編。不勉強ながら初読みでしたが素晴らしかった。

女子学生催眠NTRもの。間男(主人公)に中出しされた精子が、ヒロインと彼氏がキスしているまさにその時に受精したり。女子陸上のエースを妊娠させ試合に出られなくしたり。「少女たちの青春を踏み躙る」征服感をこれでもかと強調しています。

おまけページでは、各ヒロインたちの「市場価値」を示すオナペットランキングも書かれてます。ランクが低い子は本編でも扱いが悪くて……いやーもう書いてて嫌んなるよ!ほんとに悪趣味!最悪だよ!!(興奮)


今年はむちゃくちゃ豊作だったと思います。これ以外にも紹介したい作品がいろいろあります。明らかに良さそうだけどまだ読めてない作品もありますし。来年も面白いエロマンガがたくさん読めるといいな。

コミックマーケット99で無料配布したペーパー、「私家版エロマンガ用語集」をブログでも公開します。文章はサークル夜話.zipの新野&氷上が書いています。


サークル内で使っている独自エロマンガ用語を集めた用語集です。内輪感満点だけどペーパーなので許してちょ。あなたの〈エロマンガの読み方〉が変わる項目もあるかも?

圧縮と開放

小さいコマから大きいコマへ繋ぐことで、心理的な緊張→開放という落差を作り出す技法。エロマンガにおいては、大ゴマによる開放を男女の絶頂に合わせるのが一般的。元は夏目房之介が使った概念。「解放」が誤記であることを今原典にあたって気付きました。


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たけのこ星人『カクセイ彼女』

LO的自意識

「幼女への性欲を抑え込んでコミックLOで我慢する俺ら」な共同意識のこと。冗談的・実験的要素も強かった前世紀のロリコンブームと比べ、二〇〇二年創刊のLO誌では個人の性嗜好に寄り添った気まずさを孕む作劇が多い。「YESロリータ、NOタッチ」。

エロティカリー・インコレクト

いわゆる「ポリコレ」的価値観を前提に、それの逆を描くことによって背徳感を生じさせるエロマンガのこと。今回の『マンガ論争』でこれについて記事書いたから読んでね。

Gの一族

Gとはロリ漫画界のスター、ゴージャス宝田。派手な演出、突飛な言動、そしてエモーショナルな物語の転結。エロマンガ界におけるロリの一つの類型を作ったのがゴージャス先生だ。そのイズムを纏う作家さんがGの一族。小誌で言及した中だとドバト先生や御免なさい先生がその系譜にあるといえる。

聖なるギャル幻想

「一見DQNでチャラくて怖いけど、実は清純で処女でオタクに優しいギャル」という、オタク市場に氾濫する幻想上の存在のこと。特にエロ業界においては物語の大きな駆動力になる。聖なるギャル幻想、そうさ夢だけは、誰も奪えない心の翼だから……。

セックス至上主義

「セックスによって人は根本的に変わってしまう」、と考えるかどうかに着目したエロマンガの分類法。たとえば悪堕ち作品は多くの場合、セックス至上主義的になる。反セックス至上主義の代表例が山本直樹。

月野生理学

月野定規作品の中でのみ成立する生理学的法則。例えば、挿入後に焦らしていると子宮がちんこに吸いついてくる、など。月野定規作品における竿役はこの法則を駆使してセックスを進め、ときに受精・着床すら随意に操る。すごーい!(コウペンちゃん風)

爆乳/超乳

おっぱいの巨大さについての当サークル独自区分(あくまで独自です)。①大きめ=巨乳、②ありえない!と感じる=爆乳、③日常生活に支障をきたす=超乳、④自立できない=奇乳、⑤乳が本体=怪乳。具体例は頒布中の『〈エロマンガの読み方〉がわかる本4 特集:爆乳&超乳』を参照ください。


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ぺどっち『乳牛少女かおり』より怪乳の例

鼻の穴理論

「キャラに鼻の穴が描かれたときは、作者がそのキャラを生身の人間として描いている」という理論。伝説のマンガ評論番組、BSマンガ夜話でいしかわじゅんが提唱した。エロマンガにおいても、セックスの生々しさを強調するために鼻の穴を積極的に描くことがある。


あぐりちゃん
雨山電信『あぐりちゃんとひみつのなつやすみ』

ぷに/ガリ、アバター/リアル

ロリのキャラデザの分類法。体つきの拾い方(ぷに/ガリ)と、全身のバランス(アバター/リアル)の二軸でマッピングできる。


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さらだ『しょうびっち』より、リアル系ガリ型の例。


okada
岡田コウ『好きで好きで、すきで』より、アバター系ぷに型の例。

防犯ブザー

ランドセルにつける防犯グッズ。「幼児への性=犯罪」を示すアイテムとして近年多用されている、と氷上が主張しているもの。LO系コミックスの表紙に頻出。御免なさい作品のようにこれを避けることでタブーのない親密性を示したり、逆に物語の中盤で出すことで心理的な壁を表現したりもできる(図)。

ヨレエロ

FANZA等で人気を集める、ヨレ気味の絵で描かれた熟女エロマンガのこと。代表的な作家にフリーハンド魂がいる。


フリーハンド魂

フリーハンド魂『ボクらがヤリたいおばさん』

ローテーション・ラブコメ

特に連作・長編のエロマンガで、複数のヒロイン(多くは知り合い)が順番にセックスお当番回を迎えるような、わりとハッピーなラブコメ作品のこと。ゼロ年代『メガストア』誌の印象が強いが、現在も雑誌によっては散見される。近年の代表作はもちろん『じょしラク!』。

ロマンチック・エロマンガ

少女マンガ的な手法を取り入れたエロマンガのこと。感傷的なモノローグの多用、コマ構成における余白の積極的な利用などを特徴とする。関谷あさみやドバトの作品が代表。

ロマンポルノモデル

「エロマンガはエロさえあれば自由なので面白い作品が出てくる」「エロさえあればいいので新人作家の受け皿になる」みたいな感じで、「エロ」を何か別のものの踏み台として扱うこと。新野はこれをめっちゃ嫌っているが、最近研究批評が広まる過渡期には必要なのかもしれんと思い始めた。

緊急告知!

二〇二〇年末に頒布し好評頂いた『エロマンガベスト100』が三才ブックスさんで商業刊行企画進行中! 大幅増補を加えて二〇二二年発売予定になります。続報はTwitter等で告知しますので、お楽しみに!

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