新野安と夜話のブログ

新野安がマンガやエロマンガについて文章を書いたりするブログ。Webラジオ「エロマンガ夜話」「OVA夜話」の過去ログ紹介も。

あけましておめでとうございます。新野安です。

2018年に続き2019年も『〈エロマンガの読み方〉がわかる本2 特集:NTR』『〈エロマンガの読み方〉がわかる本3 特集:chin』と2冊のエロマンガ評論同人誌を製作しました。作家さんへのインタビューを実施したり、紙面の方向性を少し変えたり、いろいろ挑戦してみましたが、概ねご好評を頂いているようでホッとしております。また文フリでは『ガラスの仮面』論の2本目を書きました。本にできるくらい書き継げればいいなと思います。

早くも5月に次のコミケが控えております。ここではエロマンガ評論本はお休みして、ゲーム『サクラ大戦』シリーズの評論本を製作する予定です。あと細々と続けてきたWebラジオ「エロマンガ夜話」が7月で5周年なので、なんかやります。よろしくお願いします。

前置きはこのへんにして、今年も2019年エロマンガベストテンを発表したいと思います。

  • 無理に順位をつけずベスト10を挙げます。
  • 「エロさ」も、いわゆる「ストーリー」の面白さも、どちらも(エロ)マンガの魅力であって、面白ければOK。というスタンスをベースに選びます。
  • 実験的に同人誌を取り上げてみることにしました。2018年冬コミの作品は対象内、2019年冬コミの作品は対象外とします。

要09(ヤドクガエル)


同人誌です。女装少年本『要』シリーズに一応の決着が打たれた一冊。

まず主人公要くんのキャラデザが魅力的。「女装すると女の子みたい」というより、ただ女装が似合う。男装すればカッコいい。そして裸も美しい。

要くんは男と寝る自分を受け入れられず、女装することで別人として切り離してきました。この09ではついに男装のまま恋人とセックスします。最後に彼が流す涙の理由は何か。安心や嬉しさなのか。悲しみや諦念も含まれているのか。明確には語られません。未整理な感情を未整理なまま叩きつけるラストが印象的でした。

紳士付きメイドのソフィーさん4(めとろのーつ/つめとろ)


こちらも同人誌。メイドさんとご主人様の恋愛シリーズです。

つめとろ先生と言えば、マシュマロのようにふわふわで、非現実的なほど丸っこい女体です。本シリーズでも存分に堪能できます。

忘れてはいけないのが竿役エドワードくんの可愛さ。この4作目ではかつてソフィーさんを抱いていた別のご主人様が現れるのですが、狼狽えるエドワードくんが情けなくも愛らしい。今一番推しの同人誌シリーズです。

夢で東に、現で西に。(回転ソムリエ/13.)


同人誌。フェラチオオンリーです。フェラチオ好きなので選びました(堂々)。

本作はシチュエーションが非常に複雑です。主人公・修晴は清楚な雰囲気の六陽さんに恋していますが、淫夢に出てくるのはセクシーなギャルの千代。彼女にするなら六陽でも、肉便器にはしたいのはあたしだろう、そう彼女は挑発してきます。彼女は兄妹同然の幼馴染なのに……ここまででも十分な背徳性があります。

さらにもう一つひねりが加わります。実は主人公は六陽に睡眠薬で眠らされお口でレイプされているのでした。見物する千代は、自分の名前が寝言で呼ばれて赤くなったりします。二重三重の逆転で主人公のダメさを際立たせ、SM的エロさを生み出す一冊です。

W-TITILLATION(にしまきとおる)


パツキン美女親子丼!!!巨乳どころか爆乳・超乳!!!両手に花!!!みんな『BACHELOR』好きだろ!!!みんなではないか!!!俺は好きだ!!!

金髪青目巨乳ヒロインめっちゃ好きなんですがあんまりエロマンガ界に見ないんですよね。ベテラン・にしまきとおる先生の最新シリーズ完結編。ウハウハ感が溢れてます。

にしまき先生のおっぱい、現代的なやわらかさはないんですが、弾力強そうで異物感のある巨乳のどーんとした存在感が大好きです。

人妻、蜜と肉(月野定規)


月野定規作品の魅力は、相手と自分の身体を理解し・操作する技術、「月野生理学」による性的マウンティングにあります。

本作は舞台設定でそれを際立たせます。人妻が若いトレーナーを漁るためのフィットネスクラブ。優秀なトレーナーの細谷と新入会した高村、クラブのオーナー・島津とトレーナー志望の恩田、強者と弱者の戦いがいつもどおり展開されます。

その上で、勝ち残った細谷と島津の頂上決戦が始まるのです。互いにセックスを実況解説し、月野生理学がぶつかりあった結果、オーナーは堕とされます。強者同士だからこそ、マウンティングを取る満足感・取られる惨めさも印象深く、よりエロくなっています。

イジラレ(愛上陸)


2019年最大の話題作・問題作。

本作についてはエロマンガ夜話マンガ論争で詳細に語りました。簡単に要約すると、ジェンダーや性の非対称性を催眠と絡めた点に本作の面白さがある、というのが私の考えです。

特に、孕まされた子への愛をヒロインに植え付け、堕胎できないようにするラストは、「母性」とは社会による催眠だと告発しているよう。ひどくてエロいんですけど、ヘビーな読後感でした。

「犯す人」の事を「犯人」と呼ぶ(香吹茂之)


香吹茂之のSMミステリシリーズ、まさかの続編。今回も大真面目に本格ミステリしてます。

前作から続投の探偵・岡左礼太陽(おかされたいよう)に、『射精なさい…ほら!』のプロファイラー・真理谷四朗がクロスオーバー。W主人公が追う別々の情報がクライマックスで結集し、解決に向かう構成が見事です。

これまで死んでいた設定「時空間把握推理法」を今回はきっちり活用。かっちりクローズドサークルとしてまとめた前作もよかったですが、今作の壮大な謎解きの方が独自性があって好きです。

七彩のラミュロス4(山文京伝)


98年に連載開始した超長編ファンタジーシリーズが、ついに単行本でも完結しました。

山文先生らしい悪堕ち描写も魅力的ですがそれ以上に、長く引っ張った伏線を回収していくアツいラスト、そしてド派手極まりないエロスペクタクルに驚きます。

見渡す限りの群衆が全裸で魔王にひれ伏す様や、魔の波動で世界中の人々が一気に淫乱化する展開は、エロマンガ史上に残るスケールの大きさでした。

まだ間に合う…?(まじろー)


同人誌で好きだった作家さんの商業デビュー作。シュールなホラー連作『KAIKO』が特に好きです。

彼氏の光と旅に出るはずだった主人公・ナタリーが、かつて自分を調教した男、ルイに拉致監禁されます。過去を思い出すナタリーのセリフが強い。「私は私じゃなくて何かの気持ちいいだけの塊」「私は箱の中にはいない/綿は膨らんで飛び散ったわ/そして飛び散った綿はルイが全部食べちゃった…」。

そして後半、彼氏へも責めの手が伸びると、物語はカオスに。お話の論理から解放され、言葉はますます鋭く読者を切りつけます。ちょっと若松孝二を思い出す作品でした。

限界性欲(山本善々)


内面描写と露骨なハードエロを両立させた一作。

本作は、若い竿役のかわいさ・格好良さ・かよわさと、年上ヒロインが彼らにときめき欲情する過程を丁寧に描きます。女性キャラの心理に焦点を当てたエロマンガは結構ありますが、ヒロインの性欲を、日常の延長としてこれほど説得的に追った作品は珍しいのではないでしょうか。

身体の描き方にもこだわりを感じさせます。ぷっくりして大きな乳輪と垂れ気味のおっぱいは、熟女さん好きにはたまらないでしょう。なお2019年には山本先生の同人誌をまとめた単行本『隷属魔王』も出ましたが、神話的テーマの傑作です。


以上です。同人誌を含めると一気に作品数が増えるもんで選ぶのが難しかったです。一冊ごとのページ数もかなり違いますから、来年からは同人誌編・商業誌編みたいに分けてもいいかも。今年もどんなエロマンガを読めるか楽しみです。ではでは。

弊サークル「夜話.zip」のC97新刊エロマンガ評論本は『〈エロマンガの読み方〉がわかる本3』と題し一冊まるごとchin先生を特集します。今回は記事の中から、chin先生のロングインタビューを先行公開します。


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chin作品といえばシュールでコミカルな台詞回し、いわゆる「種付けおじさん語録」が有名です。しかしそれも、 chin先生の、「エロへの情熱」の現れなのです。今回のインタビューでは、先生のエロマンガに対するストイックな姿勢をお聞きできました。


ちんは「珍」で、奇行が目立つからと


――ペンネームの由来からお願いします。コミックアンリアルに掲載されたインタビュー(2019年4月号)によると、学生時代のあだ名が元ということですが。

 本名とは関係なくて、学生時代に「ちんさん」っていつの間にか呼ばれていたんですよ。卒業後に友達に聞いたら、ちんは「珍」で、奇行が目立つからと。すごいショッキングな名付け方でした(笑)。学生時代変わったやつだったんで、そう呼ばれていたんでしょうね。ただペンネームを単純に「珍」ってすると外国の人って思われるかなと。じゃ、かっこよくアルファベットにしたらいいんじゃないかと思って。

――マンガを描き始められたきっかけは?

 中学校のとき、友達とマンガみたいなことをしてみようってノートに『ドラえもん』のパロディを描いてたんですよ。みんな描くじゃないですか、そういうの。二、三ページですけどストーリーもののマンガを描いて、周囲に見せたりしてウケてたんですよね。ある日、本当はマンガってどうやって描くんだろうって調べたら、画材を買わなきゃダメだと。原稿用紙を用意して、下描きして、つけペンでペン入れするってことはわかったんです。すごい田舎だったんで、友達と二人で自転車で一時間くらいかけて買いに行って、つけペンを使ったらめちゃめちゃ難しくて。それでいっぺん挫折するんですね。

そこから改めてマンガを描いたのが高校くらいのときかな。可愛い系のイラストを描いてたんですけど、見せるの恥ずかしいじゃないですか。こんな男らしい俺が、こんな美少女を描いてるのは恥ずかしいって(笑)。それで隠れて描いていたんですけど、想いが溢れちゃって次第にマンガにしたくなって、下手くそなイラストを描いて友達に見せてたんですね。全然自分の理想通りに描けないから、どんどんのめりこんじゃって、こうなっていました。

――元からマンガはお好きだったんですか?

 中学生くらいのときから結構好きだったんですけど、部活の野球部が忙しくて、あまり読む時間がなかったんです。中学校のときに『HUNTER×HUNTER』(1998〜)を読んですごく感動したのは覚えてます。ジャンプは結構読んでいましたし、マンガは好きなほうだと思います。あと野球マンガ。『キャプテン』(1974~1980)はめちゃくちゃ好きで、何回読んだかわからない。ただ少年マンガは好きですけど、自分のマンガのエキスにはなっていないですね。ああいう話は描いてみたいとは思うけど、今やっているジャンルには持ち込んでいないです。

――アニメもお好きでしたか?

 そうですね。ただ田舎だったんで深夜アニメとかが入らない(笑)。「深夜アニメ」っていう文化をまず知らない。でも高校時代になるとインターネットが発達してきて、ニコニコ動画が出始めるんです。それでいろんなMADが出て、その元ネタはなんだろうと思って、『ハルヒ』などに触れる。こんな面白いものがあるのかと、地元に一軒あるアニメイトで円盤を買ったりして、だんだん知っていきました。

――高校のときに描いていた美少女とは?

 やっぱり『ハルヒ』の長門有希とかでしたね。あと二次創作を描いてみたいって最初に思ったのが『ひぐらしのなく頃に』ですね。田舎の因習によってお互いが疑心暗鬼になっていくという、キャラクターの濃密な関係性をノベルゲームで描いている作品に人生で初めて出会ったんです。めちゃめちゃ長くて、すごく細かいところ、気まずさとかが伝わってくる。その関係性の延長線上で妄想するっていうのがすごく楽しかったです。


火田先生の小説と出会う


――同人活動を始められたきっかけは?

 『東方Project』を知る前に、友人に東方オンリー即売会の紅楼夢に連れて行かれたことがあって、こういう同人誌を売るイベントがあるんだっていうのを初めて知って。それが東方を知るきっかけだったんですが、自分の作品を他人に見せるのが好きなので、こういうイベントにいつか出てみたいと思ったんです。同人誌の作り方を一からネットで調べて、最初に印刷した本が『鉄平』(2009)です。当時はHEVOというサークル名でした。

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『鉄平』


――一般向けの『ひぐらし』本ですね。主人公は北条鉄平で。

 三枚目キャラがすごく好きなんですね。『幽☆遊☆白書』(1991~1994)の桑原とか、『ハンター』ならレオリオとか。ぱっと見、一番最初に死にそうなやつが活躍する話が好きなんです。北条鉄平は三枚目以下じゃないですか。『ひぐらし』ってパラレルワールドなので、鉄平と(北条)沙都子が仲よくなっている世界線もあったんじゃないかと。それを実際に描いた派生作品があって、それを読んで、俺もこんなの描きたいなと思った感じですね。

――そこからしばらくして、ちんちん亭というサークルで成人向けの活動を始めてらっしゃいます。

 その前にHEVOで『東方』の健全本も出したんですよね。伊吹萃香メインのギャグマンガを二冊と、比那名居天子でギャグを一冊出しました。そこで『ひぐらし』から『東方』に移行しているんですね。そうしたら読んでもらえない(笑)。

『鉄平』はコミケで30部くらい刷って完売したんです。絵はド下手ですが話が突飛だったので、女性の方がすごく買って行ってくれて。初めての同人活動で「鉄平で活動している人初めて見ました、これからも頑張ってください」って言われたのが強烈に頭に残って、すごい嬉しかったんですよ。

それが成功体験としてあったんですが、その後がどんどん下り坂になっていくんです。見てもらえないなって、テンションが下がるわけですね。情熱の向けどころがなく悶々としているところで、火田さんという方が『東方』のふたなりエロ小説を書いていたんですよ。それを読んですごくエロいなと思って、この小説を絵に起こしたいなと描いているうちに、情熱がどんどん高まってきたんです。描いてみると結構見てもらえるし、楽しいなって思い始めたんですね。それでエロ同人を出すんです。気分転換として、サークル名も変えました。

――火田先生の作品はヒロインのセリフだけで進行しますけど、あまりにも卑語の量が多いので、ちょっと面白いというか、笑っちゃうような言葉も出てきたりしますよね。少しchin先生に似たものを感じました。

 私はそれをとてもエロいと思っています。火田先生が元祖で、僕はそれに影響されていますね。


AVのパッケージが好きで


――自作の中で一番気に入っているものはなんですか。

 基本的に最新作を一番気に入りたいですけど、そうもいかなくて。いまだに超えていない、一番気に入っているのは『ラブラブ龍魚と下品なアクメ』(2017)。同人誌ではこれですね。自給自足が唯一できるのがこれなんですよ。いまだにシコってます。最近の作品だと唯一のラブラブものなんですが、女性がなんの憂いもなくアクメに没頭している姿を一番よく描けたかなという。エロコスプレと、密室で二人きりでセックスっていう僕の二つ好きな要素だけ詰め込めた。あと肉感の表現とかもこれが一番自分で気に入っているかな。この作品のやり方を今でも参考にするときがあります。商業誌だと、『サクセックスストーリーズ』(2017)の「オヤジとメスの夏休み」という寝取られものですね。

――先ほど肉感表現の話が出ましたが、初期の作品から一貫してむっちりしたヒロインが描かれていますよね。たとえば『ヌキヌキ娘々』(2012)でも、お腹と背中の肉のたるみがすごい。そこから、厚みを感じさせる描写に変わっているかなと思います。

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『ヌキヌキ娘々』。お肉のたるみ方に注目。 引用にあたり修正を追加した


 見直していくにつれて、違和感が出てきたんだと思います。自分の中で最高の肉感表現ができるようにと思って常にやっているんですが、それをいまだに追い求めています。

きっかけとしては商業誌に描き始めたっていうのがあって。同人誌の頃はマンガを甘く見ていて、なにも見ずに描いていたんですよ。自分の中の想像だけで描いてた。そうするとこういう肉感というか風船みたいな感じになっちゃって。商業誌で描き始めることによって、編集さんからものを見て描かないとダメだよとか当たり前のことを指導されていくうち、本当の女性の肉はこういう付き方しているんだって勉強するようになったのかもしれないですね。

――実物を見て絵の練習をされたということでしょうか。

 グラビアの写真とかを模写したりしましたね。特にAVのパッケージが好きで、模写しますね。情報量がすごい多いんですよね。中身を見てもらうために様々な工夫が凝らされているんです。だから模写しがいがあるんです。おっぱいおしり二つとも映るように構図を決めたりとか、すごく勉強になる。あと現実離れした肉体の方が多いので、マンガの練習になるし。

――実際に作品を描かれているときもAVから着想を得たりすることはありますか?

 影響はされていると思いますね。『むっちりと柔らかいゆゆ様を催眠で』(2019)だったら、明確に参考にしたのがこういう体位。立側位みたいな。これはAVでよく用いられるんですよね。全身が見えるから。あとたとえば総集編Vol・2(2018)の描き下ろしのこのコマも、AVリスペクトですね。

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『むっちりと柔らかいゆゆ様を催眠で』。全身が映る、AV 風の体位


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総集編より。フェラチオAV で見られるアングル


黒い絵、エロいじゃないですか


――肉感の表現で言うと、トーンの使い方もどんどん変わってますよね。たとえば1冊目の総集編の中だと、最初の衣玖本(『OL龍魚の種付け日記』(2013))だと単に影を付けるっていうくらいだと思うんですが、『ムチモモ援交クイーン』(2014)とかになってくるとラストのコマとか、かなり細かくグラデーションで表現するようになっていて。2冊目の総集編で『火焔猫燐集団愛撫』(2016)だとトーン削りですよね。そして最近では、2種類以上のトーンと削りを組み合わせてます。

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『ムチモモ援交クイーン』。お尻の影に注目。引用にあたり修正を追加した


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『火焔猫燐集団愛撫』。削りによるグラデーション


 最初のなにも知らない頃はとりあえず影をおいとけばいいやみたいな感じでポンとおいてたんです。当時はグレースケールを使っていて、塗り込もうと思えば際限なく塗り込めるんですよ。でも面倒臭いから、最初は基本的に一影のみでやっていて。そこから『ムチモモ』のときは塗り込んだほうがエロいなとなって、グレースケールで塗り込める限界までやって怒涛のように疲れたんです。そこでコミスタからクリスタへ環境を移行するときに、トーンの貼り方を一から勉強したんですが、網点トーンで影を付けて削りブラシで削ればグラデーションっぽくなるよっていうのがあったので削ってみて、ああ確かにグレスケとあまり変わらないなってなって入れました。これ以降は基本モノクロ二階調です。また、いつもは一人で描いてるんですが、『永琳先生処方ミス』(2018)『清く正しくたのしいしょくば』(2018)のとき、忙しすぎてアシスタントさんに頼まないとどうしようもなくなったときがあって。手伝ってもらったときに、アシさんの影の付け方がいいなと思って、どうやってやってるんですかって聞いて、参考にさせていただきました。そのアシスタントさんは網点トーンをずらして重ねてグラデっぽく見せるやり方を使っていて、採用したんです。ですが、今度はやりすぎてしまって逆に濃すぎて見えづらくなった時期があって、今、『世話焼き中出し魔法使い』(2019)なんかでは抑えて使っています。

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『 蓮子潜入!催眠バニーガール』(2019)より。お尻の影に3 種のトーンが使われている。



女性がおまぬけなほど僕は抜ける


――総集編Vol・1に含まれている、『土下座メイド』(2013)あたりの作品から、chin先生作品の王道のようなものができてくる気がするんです。『土下座メイド』を例にすると、三億円のツボを咲夜が割っちゃうというわかりやすい導入があって、その償いだって無理やりヒロインを犯す竿役が出てきて。最初ちょっと長めにセックスがあって、その後コスプレを変えながら短めのセックスが続いていく。

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『土下座メイド』よりスムーズにツボを割る咲夜


 マンガの展開のさせ方がなんとなくわかってきたんでしょうね。起承転結でプロットを立てたときに、わかりやすい起があって、それが三億円のツボで。自分の中ではエロマンガの起承転結って起承転承転承転承転承転ってドドドって続いて結、と思ってるんですけど、その起がわかりやすく短いほうがいいと思っていたんです。  短いセックスが続くっていうのは、自分が好きなものを詰め込んだ結果、自然にそうなったんですよ。エロ水着が好きすぎていろんなコスプレをさせたいが故にそうなったんです。

――「三億円のツボ」はあまりにわかりやすくてちょっと笑ってしまいます。安直すぎてコミカルな導入は後の作品にも出てきますよね。

 基本的にギャグも好きなのですが、エロの中でギャグを入れられたら僕は萎えるんで、エロシーンでは入れないようにするんです。でも導入って容赦なくギャグ入れても大丈夫なんで、入れどころって思ったんでしょうね。いつもギャグを入れようと考えてるわけではないですけど、女性がおまぬけなほど僕は抜けるんで、エロく描こうとするとやっぱり導入もおまぬけにしちゃうな。強いくせにこんな抜けてるせいで、お前は今からやられるんやで、みたいなのが好きなんでしょうね。これも自然にそうなっちゃいます。

――同人誌『幻想催眠』シリーズ(2012)から作風の影響を受けたというお話を事前にお聞きしましたが。

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『 幻想催眠2』(2012)より。スムーズに催眠にかかる咲夜


 すごくリスペクトしてるんですよね。サークル腹痛起こすの悔王先生の作品って、やっぱり起が少しコミカルなんですよね。『幻想催眠2』など今見たら、僕の好きなものが全て詰め込まれている。あと、この本は多キャラですけど、一人を取り上げた作品でもシチュエーションがパンパン切り替わるんです。そのあたりはリスペクトさせて頂いてます。


セックス用の汚らしいおじさん


――今chin先生って言うと種付けおじさんのイメージがあると思うんですが、読み直すと意外なのが、初期の作品では竿役に顔がないし、結構さっぱりしている若者も出てくるんです(図15)。一方で商業作になるとはっきりおじさんおじさんした顔が出てくる。おじさんの顔こそメイン、というように見えるコマもあります(図16)。

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『 衣玖さんと強制セックスレッスン』(2014)より。作中でも「イケメン」と言われる竿役


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「 離島の女医はヌキヌキもお仕事」(『種付け!プレスプレスプレス』所収)より、迫りくるおじさん

 東方の二次創作を描くときは、目を描いてしまうと存在感があってそういうオリキャラなのかなってなってしまう。目のないおじさんなら記号になって、邪魔にならないけど存在はある状態になると思うんです。商業誌のほうは、まず最初に編集さんから「目なしはないよね」って言われたんです。オリジナルだから竿役にもキャラ付けがあったほうがいいよってことなんでしょうね。「離島の女医はヌキヌキもお仕事」のおじさんは、麗しい女医が高い志を持って離島にやってきたところをこんなに汚らしいおじさんに今からやられてしまうんだというのを表現したかったんですが、今見ると顔がめちゃめちゃでかいですね(笑)。

――「人妻だいすき!ひろゆきくん」のひろゆきくんとか、おじさんじゃないけどすごい顔ですよね。

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「人妻だいすき!ひろゆきくん」(『種付け!プレスプレスプレス』所収)より、クリーチャーのようなひろゆきくん。引用にあたり修正を追加した


 自分で描いてて気持ち悪すぎて、逆にはまった(笑)。今だったら多分描けないですね。あまりにもアクが強すぎるので。

おじさんを出すと、美醜の対比がいいんですよね。目なしの青年は清潔感があるじゃないですか。それってギャップが出ないんですよね。脂ギッシュなおじさんと、美女の対比が描きたくなって、同人でもおじさんっぽさを出すようになったんでしょうね。

ただ、こってりなおじさんを描くときに注意していることがあって、あまりにも汚らしくならないことですね。個人的な性癖として、トイレでセックスが苦手なんですよ。AVとかでトイレの床でやられてるとか、自分は苦手なんです。根底に清潔感が欲しい。チンカスまみれのちんこは不衛生だなと思って抜きに集中できなかったりするんですよね。セックス用にちゃんと用意された汚らしいおじさん、という感じで、清潔感を演出するように僕はしていますね。トイレも、セックス用に用意されたトイレだったらいいかもしれないです。


ここに一緒に肩を並べて描ける


――清潔感と言うとたとえばどんなところに気を付けてらっしゃいますか。

 あまりにも毛むくじゃらにならないとか、ハゲもあまりにも散らかしたハゲにしないとか、体を洗っていないとかそういう表現はしない。おじさんが臭いのは、とんでもない中年オヤジの濃厚な性欲の香りが漂ってくるのは好きなんですが、風呂に入っていない垢まみれの臭いがするとかは嫌なんですね。モグダン先生とか、おじさんが出ても清潔な感じですよね。汚い部屋でも綺麗に見えるようになってるといいかなと。

それと、おじさんからの言葉の暴力が多少あるから、肉体的にひどいことはセックス以外、平手打ちとか鼻血を出させるとかは自分の作品ではしないかなと。丁重に扱って気持ちよくなってもらわないといけないし、自分も気持ちよくなる。相手を見ながらおじさんが調整していくってことですね。

あとおじさんいいなと思ったきっかけは、サテツ先生かな?「SOS」(『Servant Of Servants』(2013))で気絶するほどシコったんですよ。これはマジで名著ですね。これはお兄さんなんだけど、ちょっとおじさんに近いところをいっている。これはもう伝説の名著で、イベントで買って即、シコれすぎて感想を呟いたら、まだ僕が誰にも知られてなかった頃なんですが、ツイートがアキバblogさんにとりあげられて、chinさんも絶賛みたいな感じで、謎の一般人が絶賛してますみたいな体(笑)。他の本では汚いおじさんを出されていて、すごい好きなんですよね。

――サテツ先生と彩社長先生の合同本とかすごいエロかったですよね。

 自分のルーツの一つですね。彩社長先生も今アズレンなどでとてもエロい本を描かれていて、億で抜いてます。それで、お二人も描いてた『幻想郷に種付けおじさんがやってきたYA-YA-YA』(2015)っていう同人誌があるんですけど……

――東方ジャンルのアベンジャーズみたいな合同誌ですよね。

 すごいですよね。主催者さんの胆力です。オールスターで、ひとつの達成感すらありますよね。ここに一緒に肩を並べて描けるっていう喜びがありました。参加されていた先生達がみんなレジェンド級の東方絵師さん達で。それで、なんでメインが種付けおじさんかっていうと、主催者さんが僕にインスピレーションを受けてくれたんです。chinさんの種付けおじさん面白いんでコンセプトにしましょうってなったんですよ。

――chin先生がいなければこの伝説的名著は存在しなかったわけですね。

 ルーツの人達と肩を並べられたのでよかったですね。


エロいと思わないことはしない


――おじさんから「語録」の話に移りたいんですが、「死ね」って言ったり、乱暴なことを言うと同時に優しい言葉をかけたりとか、いわゆる「語録」らしきものは『ムチモモ援交クイーン』あたりにもう出てるんですよ。最初から面白いセリフを書こうという意識をされていたんですか。

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優しい口調と乱暴な口調が同時に出てくる例。引用にあたり修正を追加した


 2014年からやってるんだと思ってびっくりしたんですけど、基本的には意識したことはないですね。「死ね」って書こうと思って書いてなくて、セリフのテキストを打っているときに、リビドーに任せて書いてたら自然と死ねって言ってたみたいな感じで、とんでもなくノってて。ぬえちゃんとセックスしていて、嗜虐心と可愛がりたさの二律背反の中で戸惑いながら書いたみたいな感じだと思います。これはギャグじゃなくてマジです。

どんどん自分の気持ちが高まりつつ書いていってて、だんだん大きくなっていくわけですねこの二律背反が。可愛いのにアクメ死んで欲しいんだ、どうしたらいい、ってなるんですよ。本当に死んでほしいなんて思ってないんですけどね、天にものぼる心地でいてほしいと思うわけです。それに加えて女の子に無様なことをさせたい、俺を勃起させろみたいな気持ちも出てくるわけじゃないですか。だからポーズとっているときにもなんでそんな下品な体をしているんだ、俺への当て付けか、とか、そういうセリフがぼろぼろ出てくるようになってくるわけです。憎たらしいんでね。まぬけな格好しやがってみたいな、どんどん罵倒の言葉が出てくる。でも罵倒するばっかりだとダメなんですよ、愛でないといけないっていう感じで、「国宝」「文化遺産」みたいな感じの言葉がどんどん出てくるんですね。そうするとだんだん語録みたいな感じになっていってしまって。2016年くらいにそれがピークに達するわけですね。この頃は本当に書いてて楽しかったですね。

今は語録botや改変などもあって、みんなが話題にしてくれるのはとても嬉しいですし、周りからの期待もわかるんですが、でも自分の中では変わらないポリシーがあって、エロいと思わないことはしないというのがあるので、面白半分で受け狙いみたいなのはないです。

――あくまでエロとして出てきたものということなんですね。

 この話は本当に喋りたかったんです。Twitterでは言えないので(笑)。でも本当にエロいなと思って書いているんで、みんなもエロいなと思って読んでほしいっていう気持ちがあります!

サンプルはここまで! インタビューの続きは『〈エロマンガの読み方〉がわかる本3』でどうぞ。メロンブックスとらのあなに委託中!

(本記事の引用図版は即売会で頒布する書籍版と同じものを使っているため、即売会の基準を意識した修正が追加されております)

コミックマーケット97三日目に、エロマンガ夜話がサークル「夜話.zip」として参加します。

エロマンガ評論集『〈エロマンガの読み方〉がわかる本3』を頒布する予定です。

今回はchin特集

表紙

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表紙イラスト:chin 表紙デザイン:日村克美

目次

  • わーすごいすごい、くっそ下品なアクメの花火でございますね しかしその純粋さ誇り高い 〜ちんちん亭評論〜 雨山電信
  • 「おまぬけ」だからエロくなる! chinロングインタビュー(一部先行公開中)
  • chin 語文法初級 君も種付けおじさんになれる! 新野安
  • 女性向けエロ漫画としてのchin 作品〜種付けおじさん周辺主義〜 もちごめ
  • chin主要作解説
    • 『種付け!プレスプレスプレス』『サクセックスストーリーズ』『発情ケダモノ交尾録』『ちんちん亭大盛定食』vol.1, 2、『世界一かわいい俺の嫁』のレビュー

頒布形態(予定)

本文60P・白黒

コミックマーケットC97三日目(12/30) 南ム38a 夜話.zipにて頒布(webカタログ

+四日目(12/31)南ナ32a ちんちん亭に少部数委託予定(webカタログ

頒布価格 一冊500円

メロンブックスとらのあなに委託中。

内容について

今回は初の作家特集。シュールでコミカルな「種付けおじさん語録」と、ムチムチヒロイン&エロエロコスチュームによるスーパーストロングスタイルなエロマンガで人気のchin先生を取り上げます!

chin先生のロングインタビューはもちろん、同じエロマンガ家の視点からchin先生を語る雨山電信先生のエッセイ、「語録」の分析、そして衝撃の「chin作品実質女性向けエロマンガ説」まで、chin作品の面白さを考える評論集です。

今回はchin先生のご厚意により、四日目のちんちん亭ブースにて少部数委託販売もさせていただきます。これを読まなきゃ種付けおじさんは語れない!

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