新野安と夜話のブログ

新野安がマンガやエロマンガについて文章を書いたりするブログ。Webラジオ「エロマンガ夜話」「OVA夜話」の過去ログ紹介も。

コミケ103新刊は……

沼、のぞいてみますか。

『教養としての「特殊性癖」』

「ケモノ」「リョナ」「卵子姦」「TSF」など、エキスパートたちによる「特殊性癖」ガイド本です!

性癖の歴史、本質、そして初心者おすすめ作品を紹介しています。

さらに「TSF」「卵子姦」作品で知られるサークルせみもぐら・由家のロングインタビューと、ビフィダスによる由家論。

スト6発売記念の格ゲー二次創作史、雨山電信による高津論も収録。

表紙

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目次

  • インタビュー
  • 由家先生の作品には魔法がかかっている ビフィダス
  • 性癖ガイド
    • ケモノ かつて、あるいは今もケモナーである君たちに gudn(ケモナー烏合の四人衆)
      • 言及作品……『デジモンテイマーズ』、『ポケットモンスター』、okett『ELECTRONIC DANCE MUSIC』、INAX『郁郁祭』など
    • リョナ 暴力で抜いてもいいじゃない AwA(リョナ漫画家・イラストレーター)
      • 言及作品……中沢啓治『はだしのゲン』、『ドラゴンボールZ』、つくすん『妖精で遊ぼう』、窓『カニバリズム!』など
    • 卵子姦 卵子と子宮がポルノ化する歴史 新野安(エロマンガ批評家・卵子大好きクラブ会長)
      • 言及作品……子宮委員長はる『願いはすべて、子宮が叶える 〜引き寄せ体質をつくる子宮メソッド〜』、ボーヴォワール『第二の性』、F4U『委員長はボッコボコ 完全版!!!!!』、緑のルーペ『宇宙人の冬』など
    • TSF 女性になったら、エロいのか? 氷上絢一(ライター、TSF探求者)
      • 言及作品……『転校生』、『らんま1/2』、Asunaro Neat.『TSロリおじさんの冒険 オナニー編』、左藤空気『愛聖天使ラブメアリー 〜悪性受胎〜』など
  • 特集外コラム
    • スト6発売記念! 格闘ゲーム〈二次創作〉史 国里コクリ
    • 雨山電信のいいからエロマンガ全部持ってこい! 第三回 高津・ザ・マザーファッカー

その他サンプル

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各種情報

  • 本文86P
  • 頒布価格700円
  • コミケ103(東ノ39b)にて頒布開始、メロンブックスとらのあななどに委託。後日FANZA、DLsite、BOOTHにて電子版も販売予定

弊サークル「夜話.zip」のC103新刊エロマンガ評論本は『教養としての「特殊性癖」』。今回は記事の中から、サークルせみもぐら・由家先生のインタビューを一部抜粋してお送りいたします。

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『ゆびさきミルクティー』を読んで……

――ペンネームと、サークル名の由来を。

由家先生(以下、よ) 高校生のころだったか……机に向かってペンネームどうしようかって悩んでたら、並んでいたマンガから桑島由一先生原作の『神様家族』が目に入って、由の字をもらって、いいじゃん「由家」って。それが由来です。数年後、ぱっと見で読みづらいなと後悔します。

 サークル名はもっとキャッチーさが欲しくて、当時流行ってた『げんしけん』を参考にしました。サークル名を決める時の、ひらがなに(「げんしけん」に)しようという下りに倣って決めました。とくにドラクエの同名モンスターに思い入れがあるわけでもなく……ペンネームもサークルもそんな感じなんで、改めて人に説明すると恥ずかしい限りです。

――マンガを描き始めたきっかけをお聞きできますか。

よ 物心ついたころから絵を描くのは好きだったんで、五歳くらいから、暇な時とかチラシの裏に絵を描いたりしてたんです。そのうち、何かしらそういう仕事に就きたいと思うようになって。ラノベ読んだらイラストレーターになりたいなー、エロゲやったら原画家になりたいなーって、オタクは思うじゃないですか。

 ただ絵がうまい人の中で戦えるほど、自分の絵のうまさに自信を持てなかったので、イラストレーターとかは除外。手も早くないから、アニメーターとかマンガ連載も無理。人にあれこれ言われて仕事したくないから、どこかに入社もできない。でも早めに自立はしたい。都合のいい仕事ねーかなーって考えたとき、エロ同人がそれだったんです。

 即売会自体は、高校生のころから行ってました。そこでなかじまゆか先生のサークルが、二時間待ちの行列とかになってて、コミケじゃなくてサンクリでそんな感じですよ。どうやらエロ同人は儲かるらしい、やってみる価値あるなと思いました。

――由家先生はWEBマンガ活動もなさってましたよね?

よ そうですね、WEBマンガ自体は中学のころからやってました。最初は二〇〇六年の『女装男』(図)ですかね。もっと前にも、お母さんとか学校の先生に見せるようなものは描いてましたよ。『モンスターファーム』のモンスターが戦うのとか。

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――そこから『女装男』にちょっと距離がある気もしますが(笑)。女装にハマる主人公が、別の男から惚れられちゃうコメディですね。

よ たしか……『ゆびさきミルクティー』(二〇〇三〜二〇一〇)を読んだのかな。『プリティフェイス』(二〇〇二〜二〇〇三)とどっちが先だったっけ? あとはやぶうち優先生の『少女少年』(一九九八〜二〇〇四)とか。僕、TSは全年齢向けの方が好きなんですよ。

――なるほど、先生のTSもの、女装ものの原点っていうのが、そういう女装男子作品にあると。ちなみに『女装男』って18禁作品なんで、何らかの時空の歪みが発生していると考えられるわけですが……。

よ まあ、その辺りからなんやかんやでめちゃめちゃやる気を出して、日本工学院のマンガ・アニメーション科に進学しました。夏休みの間に原稿を描いて、「LO」に持ち込んだんです。それが『人生ゲームAlter』におまけで収録されている「仔犬のマーチ」「過激!悪戯三兄弟」ですね。ただ同人誌と比べるとどうしても身入りが悪いし、定期的に描くのもしんどいんで、結局同人メインになってます。

エロマンガの文字、多すぎません?

――WEBマンガの『人生ゲーム』(二〇〇六〜二〇一一)って、セルフエロパロの『Alter』(二〇〇九〜二〇一一)も含めて先生の代表作だと思うんですけども。一度死んだ男が、記憶を保持して赤ん坊に転生して、精神年齢の高さと経験値で無双するみたいな話ですね。

よ そうですね。『人生ゲーム』は本当に出世作だと思います。頭が上がらないんだけど……若気の至りすぎて見返したくない。

――いやでもこれ、今流行ってるやつじゃないですか。転生してハーレムみたいな。

よ その辺の先見の明はあったと思います。けど、ちゃんと自信が持てるようになったのは『Alter』出してからですね。これがそれまでの活動に比べて売れたんですよ。メロンブックスとかとらのあなに置いてもらえるようになって、そこからトントン拍子。なんてすごいんだ委託販売、一〇〇〇部二〇〇〇部売れるぜー!とか言って、総集編出すころには人生のエンディング迎えた気分になってました。

 その後『変身ヒロインVS悪の科学者』(二〇一五)あたりからか、DL販売を始めてみたら、更にそれまでが霞むくらいの売上が出て。なんせ元手がかからない、在庫も存在しないから売れるだけ売れる。印刷費なしで三〇〇〇部とかですよ。革命的というか、こんなうまい話があるのか?と。最近はコロナ以前にこっちも体力がきつくなってきて、イベント出るのも中々しんどいので、本当ありがたい限りです。

――DL同人で成功した理由について、どのように自己分析されてますか?

よ シンプルな絵柄で、実用本位に作られてること。ダウンロード同人におけるプチ売れ筋に乗れたのかなと。もちろん一番売れているのは、商業クオリティのやつなんですけれど、こういうニッチ路線のパイも十分にあるのがDL同人かなって思います。

――先生のマンガって、情報量が多すぎないので、スマホとかでも読みやすい気がしますね。読みやすさを意識されてたりしますか?

よ してますね。エロマンガの文字数って多すぎると思いません? 僕もセリフ回しとかノクターン(ノクターンノベルズ。エロ小説投稿サイト)のエロ小説をよく参考にしたりするんですけど、小説基準の文量をそのまま乗っけちゃうと吹き出しに収まらないんで、思いついたものを取捨選択するようにしてます。

――文字だけでなく画面構成全体の話で言うと、先生の昔の作品って、今より情報量が詰まってますね(図)。そこから段々シンプルになっている。

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『人生ゲームAlter II』「過激!悪戯三兄弟」。複雑な髪の処理や汁の多さなどに注目。

よ 当時持ち込みした編集さんに言われたんですよ。「画面の密度を増やして、見開きを豪華にするのが大事」って。言われた時は確かに納得したけど、それはそれとしてやっぱり息苦しいなっていうのもあって。シコるときってそんな頭回んないじゃないですか。……とはいえ今でも、他の作品と見比べるほど、俺のマンガ大丈夫かと不安になる。並べたサムネがあまりにも白すぎる。

――いやいや、二〇一〇年代にエロマンガの画面がごちゃごちゃしていった中で、先生の白さは魅力的でしたよ。

よ あのころ、商業エロマンガの豪華主義ってすごかったじゃないですか。とてもじゃないけどついていけない。なんで、野球で例えるなら、派手な剛速球や変化球はないけど、のらりくらりやっていく軟投派で行こうと思ったんです。画力向上については、節々で挑戦はしてますけど、そのたび現実に打ちのめされてたり……。

最低限のラインはあります

――事前アンケートで『五等分の花嫁』(二〇一七〜二〇二〇)の話をなさってましたね。春場ねぎ先生を参考にして、絵柄を変えたりなさっていたことがあると。『妹と吸収ごっこ』(二〇二一)(図)ですかね?

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『妹と吸収ごっこ』より。目の描き方がそれまでより複雑化し、春場ねぎ作品にも近いテイスト。

よ そうですね。自分のヒロインに、目力がないなって思ったんで、特にその参考に。このあたりからDL同人の方でも、豪華主義な作品がランキングで目立ち始めて、頑張らないとまずいかなって。最近も『TSロリおじさんの冒険 オナニー編』(二〇二三)のろんな先生とか、すごいじゃないですか。画面の密度があるのに読みやすいんですよ。そういう人たちに追いていかれないように絵を進化させたいんですけど、進化するほどその分の作業カロリーが増えて、しんどい……。

――シンプルな画面で、インスタントなエロ、内面の表現は最小限ってところで、クールでドライな美意識に貫かれてる印象を持っていました。

よ いや、単に面倒くさがりなんですよ。いらないものをそぎ落として、結果こうなってるんです。必要最低限の努力で実用性を維持したい。僕、作業ペースも基本ローギアで、余裕のあるスケジュールをダラダラやってるんです。年間平均作業時間、進研ゼミぐらいしかないですよ、多分。

――春場ねぎ先生以外に、絵柄を参考にした人はいます?

よ 『人生ゲーム』のころはCuvie先生とかを参考にしてましたね。『TS学園ワンダフル』(二〇一〇)になると、アリスソフトの織音先生ですかね。目の描き方とか。

――そういう方々の絵柄をシンプル化していって。

よ いやー……しようと思ってシンプルになったわけじゃなくて、自分なりに丁寧にやろうとしたんだけど、自分なりに頑張ってこの程度なんですよね……。絵に対する熱量の限界だって理解しましたね、今は。

――でも先生の作品を読んでると、シンプルながらすごくフェチを感じさせるような描き方をされてるじゃないですか。『まなちゃん係』(二〇一六)のボディラインとか(図)。

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よ 『まなちゃん係』はちょっと今見るとやりすぎたなって思うんだけれど、ロリ体型を意識はしてました。コマ内での重要な部分はしっかり丁寧にやってますね。特に手コキの手とか(図)。いつもは大体グーかパーなんですけど。そうしないと本当に手抜きに見られちゃうんで。シンプルに必要最低限にしたいんだけど、読者の立場で見ると、これはさすがにないなっていうラインが明確にありますから。そこだけは割らないようにしてます。

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『TS学園ワンダフル2』より。

TS娘は男より優位がいい

――TSのお話をお伺いしたいんですけど。まず、先生がTSを描いたきっかけになったコラ画像があると聞いて、発掘してきました(図)。如月群真先生の『いちご100%』同人誌『KOZUE PANIC』を基にキャプションを載せた画像ですね。

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よ よく見つけてきましたね!? ええ、これが『TS学園ワンダフル』を描こうと思ったきっかけです。

――ヒロイン側がやれやれスタンスなのが、先生の描くTSものに近いですよね。

よ そうですね。このコラの影響もあったんだと思います。

 今はTSも市民権を得ましたよね。僕が描いてたころはそうでもなかった。TSを描き始めたのは、まだそこまで人が増えてないけど、今後伸びそうだったからっていうのもあります。自分の活動全体に言えることですけど、できること、やりたいこと、需要、この間を探していくのは常に意識してます。そうしないと、数字取れないんで。ありふれたシチュエーション、ありふれたジャンルだと、先駆者がいて、大抵太刀打ちできないんですよ。

 ……だから『低級ザコ淫魔の触手が不快なので感覚遮断魔法を展開しましたわっ!!』(二〇二二)とかすごい。してやられた感が本当にすごい。「感覚遮断」ジャンルで模倣もいっぱい出てますけど、やっぱオリジナルのクオリティが一番高いんでね。自分もあんなヒット飛ばしてえええーって思いましたよ。

――由家先生のTSって、今読み直すと独特な気がするんですよ。メインストリームのTSって、女の子になって戸惑うみたいな……。

よ 「俺は男だ!」みたいなあれですか。

――そうそう。それでメス堕ちするとか。でもちょっと由家先生のって違うじゃないですか。

よ 一般向けで描く分にはそれでもいいんですけど、エロで描くなら、それはちょっと解釈違いかなって。TSFを描く時はヒロインに感情移入して描いてるんです。自分の分身ならオスに対して精神的に優位に立ってほしい。メス堕ちは嫌だ、と。せっかく美少女になったんだから、回りの男にちやほやされたい。

――先生のTSものって、TS娘が社会的に性欲処理の役割を割り当てられてますよね。でもメインヒロインは大体、TSして男に犯される自分を受け入れて、クールに、したたかに生きていきますよね(図)。

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『TS男子校付属中童貞マッサージ部』。したたかに生きるTS娘たちの日常とともに物語が終わる。

よ 自分が同じ立場だったら、そうありたい。男たちのいいように食い物にされたいわけではない。むしろ逆に、男たちを利用するくらいがいいなと。

――女装ものもお好きということでしたけど、女装マンガの一つの定型として、女装をしている男が周りの男を惑わし振り回していく、っていうのがありますよね。八〇年代の『ひばりくん』からしてそうなわけですけど。その延長って感じですかね。

よ そうですね。そういうのはあると思います。尽くすより尽くされたい。

サンプルはここまで!残りはぜひ製品版でどうぞ。

弊サークル「夜話.zip」のC102新刊エロマンガ評論本はロリマンガ特集。今回は記事の中から、感動の名作ロリマンガ『少女とギャングと青い夜』や『TS少女ハルキくん』で知られるドバト先生のインタビューをお送りいたします。

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風邪薬をたくさん飲むと……

――ペンネームの由来をお聞きできますか。

ドバト(以下、ど) 鳥類が好きなんですよ。ちっちゃい頃は双眼鏡と図鑑を持って、よく野鳥観察をしてました。ドバトが好きだから、かわいいねと思ってペンネームにしてます。ドバトは多くの場合害鳥なので、よく自分のことを卑下したペンネームだと思われるんですが、自分をアゲてるペンネームなんですよ(笑)。

――サークル名「コデインガール」の由来は何ですか?

ど  「コデイン」ってご存知ですか?咳止めシロップに入ってる成分なんです。でも中毒症状があるから、咳止め薬をガボガボ一杯飲むとドラッグとしての効果があるんです。かわゆいと思って、その当時……。

――キメてらっしゃったんですか……?

ど 全然ですね。ファッションです。

――マンガを描き始めたきっかけは。

ど 幼稚園の頃から絵や話を描くのが好きだったんですよ。絵本とか紙芝居を作って妹に読んだり。紙芝居を見ていたときは紙芝居を作ってたけど、マンガを読むようになったからマンガやイラストを描く、って順調に成長しました。ただマンガってやっぱ大変なんで、あんま続かなくて。ちゃんと描き切ったのは、サモンナイト本の『ショートトリップ』(二〇〇四)が初めてですね。

――それ以前にはどんな絵を描かれてたんですか?

ど ラクガキですね本当に。少女マンガが好きだったんで、種村有菜先生に結構影響されて、頭身が高くて胸もある女の子を描いてました。『神風怪盗ジャンヌ』(一九九八〜二〇〇〇)ですね。「りぼん」って『姫ちゃんのリボン』『ママレードボーイ』みたいなもうちょっとホワっとした傾向があったんですけど、そこに殴り込んできたドオタクの作品で、バシバシにキマってしまって。

――事前アンケートでも影響を受けた作品として『ジャンヌ』を挙げてらっしゃいましたけど、どの辺に影響を受けたんでしょうか?

ど 種村先生の作品ってすごい見得を切るじゃないですか。ド派手で花が飛んでてスカートが翻って、髪も風になびいてるみたいな(図)。自分の作品でも見栄を切るコマって入れたくなる時があって、種村先生になったつもりで描いてます(笑)。ゴージャス宝田先生も好きなんですけど、あの方もバーンって見栄を切るタイプじゃないですか?(図)ああいうマンガが全般的に好きなんだと思いますね。


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『ジャンヌ』7巻。

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『キャノン先生トばしすぎ』。


――同人誌を出したのは、先生の年齢としてはいつ頃ですか?

ど 一八とか二〇歳ぐらいのときの本だと思います。私高卒でバイトしてたんですけど、初めて自分のお金でパソコンを買って、それが家庭で初めてのパソコンだったんですよ。そこからズルズルと情報に触れるようになって、オタク濃度がどんどん濃くなって。それでこの本を出しました。

 その頃インターネット上でイラストサイトが流行ってたんですよ。『サモンナイト』の絵を描いていたら、たまにニュースサイトで取り上げってもらって。「ゴルゴ31」とかが取り上げてくれると嬉しいみたいな……。そんなことをやってたらいつのまにか同人イベントに客として参加するようになって、描くようになりましたね。

『サモンナイト』でロリコンに

――改めてなんですけど、ドバト先生ってロリコンですよね。

ど ロリコンです。

――なにかロリコンになるきっかけがあったんでしょうか?

ど 『サモンナイト3』(PS2、二〇〇三)にハマったんですよ。すごいちっちゃい子が、出てくるんですよいっぱい。主人公は先生で、小学生みたいな生徒が四人でてきて、親密な関係を築くんです。Hじゃないんですけど、黒星紅白先生の絵でやるわけです。多分それがきっかけで自分の絵の頭身がめちゃめちゃ縮んだんですよ。

――種村有菜先生から……(笑)。

ど 『少女のエナメル』(二〇〇八)がちょうど移行期だと思います。表紙はまだ等身が縦に長いんですけど、中のマンガはもう縮んでるんです(笑)。

――(笑)。『サモンナイト3』がきっかけという部分があったんですね。

ど そうですね、見た目が圧倒的に可愛すぎると思って。少女マンガにもあんなにちっちゃい女の子っていないんですよ。絵柄がシンプルで、おしゃれ感もあり……作中のベルフラウっていう赤い子がすごい好きで。金髪の釣り目キャラだよ! ほとんどハルキくんですよね。

――『少女のエナメル』より前から描かれてる、最初期の「ひぐらし」本のお話をもう少しお聞きしたいんですが。わりとセリフでキャラクターの内面をぶつけ合っていくような内容が多い印象を持っていて……(図)。変な話、先生の若い頃って感じがして。

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『All about the Lyric』より

ど わかる、若い(笑)。

――キャラクターへの思い入れが前面に出てる作品っていう印象を持ちました。

ど オタクに目覚めたのが遅かったんで、本当にそこが初めてなんですよ。迸ってましたね、本当にね。

――これはやはり梨花ちゃんがロリコンスイッチを押したところがあったんでしょうか。

ど 多分サモンナイトの次にめっちゃ押されたのが多分古手梨花で。綿流し編で、圭一くんが魅音のせいで窮地に陥るじゃないですか。梨花ちゃんが心配して助けてくれようとするシーンがあるんですよ。めっちゃ怖いひぐらしの世界の中でこの子だけが俺を助けてくれた、梨花……と思って。素直だったんで全面的に信頼してたし、助けてくれるんだ、ありがとう!って。僕の聖母。

 そのときの古手梨花が、なんか土で汚れた姿で助けに来てくれるんですよ。今思うと勘違いなんだけど、この子は村のみんなにレイプされてるんだと思って(笑)。村って性的すぎる、みたいな。でも村のみんなを掌握してもいるし、淫らな夜の女王みたいな像を想像してしまって。そこから私のすべてが古手梨花に向かって行ってしまって。大人になって初めてハマるとハマり方がおかしくなるみたいで、本がいっぱい出ましたね……。

――ロリにハマっていった流れはそうだとして、エロに進出したのはどういう? 当初は一般作を描かれていたのが、『少女のエナメル』からエロマンガになるわけですが。

ど これはかなりプライベートな話になるんですけど……当時一九から二五まで付き合ってた男がいたんですね。で、結婚しようと、同棲しようと。そしたら……同棲して一週間で振られたと(笑)。結婚するしオタク趣味も卒業か、マンガ描くのもそろそろおしまいかみたいなことを思っていたんですよ。が、振られる。

 お金もそんな持ってない。もう実家の私の部屋はない。貧者の一人暮らしが始まるわけですよ。お金を作らないといけないなと思ってね。自分の能力の中で、お金になりそうなのはエロマンガかなと。もともとエロ同人は読んでいたので、描くこと自体に抵抗はなかったです。

――なるほど、シノギとして……(笑)。

ずんだもちを売りながら

――その後、商業誌で『ロリビッチなう!!』(二〇一〇)の作品を描かれるわけですが。けっこう一般作と違いますよね。ハイテンションなギャグっぽくなっていて。

ど オークスで一番最初に書いたのは「ラプンツェル」っていう話で、陵辱モノなんですよ。とりあえず一発書いてみて、次はちょっと方向性変えて「ウサギさんはお強いのです。」を書いて、二つ比べたときに、編集の受けが良かったのがウサギさんの方だったんですよ。暗いとか明るいとか、コメディであるとかシリアスであるとか、話の内容に頓着がないので、じゃあこっち描くか、と思って。編集が陵辱の方が良かったねって言ってたら、ずっと陵辱を書いていたかもしれないです。

――僕はてっきりゴージャス先生の影響があるのかと思って。

ど もちろんあります。コメディを描くってなったときに自分の中で一番引き出しがあったのがゴージャス先生だったので、すごい影響されたものがいっぱいできてしまった(笑)。

 ゴージャス先生の絵柄がすごい好きで、ポージングもめちゃめちゃかわいいじゃないですか。ただ立ってるだけじゃなくて、女の子のかわいさを表現したポーズなのがすごい好きで、お話のテンポの良さも、こういう感じで描きたいなと思ってやってましたね。すごい話の速度が早いんですよ。

――以前お聞きしたお話だと、エロマンガを描き始めるとき、ゴージャス先生と関谷あさみ先生の作品のページ配分の統計をとって、研究したんですよね。

ど はい。前戯が何ページで、挿入してから何ページみたいなのを全部書き出しました。最初の『少女のエナメル』を描く前にやりましたね。

――ぼく(新野)ドバト先生の作品で初めて読んだのが「いぢってハニー」だったと思います(図)。短い中にいろんな展開が入ってて、豪華だなと思います。マンガ家専業になって初めて書いたっていう話を解説でされてますね。

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ど それまではデパ地下でずんだもちを売りながらマンガを描いていたんです。だから編集部の方に、月一で描かせてくれないかみたいな相談をしたんですよ。ずんだを売るのを止められるから(笑)。

 でもやっぱ新人だし、月一では載せられないかな、みたいな話をされてたんですけど、じゃあ代原扱いでもいいからとにかく月一で描かせていただいて、載せるところがあったら載せていただけませんか、みたいなことをずっと言い続けていたら通ったんですね。

――エキセントリックなエロがいろいろ入ってますよね。爪痕を残そうという先生の気概がすごい作品だと思います。

ど 「いぢってハニー」は本当に元気いっぱいで、インターネットでも話題になって嬉しかったですね。話題になる味を覚えてしまったんで、よりインターネットになっていっちゃった。

――インターネットになる?

ど 紹介サイトとかでピックアップされたいなっていうことですかね。「えろまんがかんそうぶん」さんとか、たまごまごさんやへどばんさんのサイトとか。自分でもマンガを買う参考にしてましたからね。変な作品書いたら、また載れるんじゃないかなって思うようになっていった部分はあるかもです。

陰毛はちょっと……

――『ロリビッチなう!!』の次が『純愛以上レイプ未満』(二〇一一)ですね。この作品はエロゲ原作もの(『りとるらびっつ』(二〇一〇))なので、おっぱいも出てきますけど(図)。おっぱいは憎いですか?

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ど 憎くはないですけど(笑)。本当におっぱいが好きな人が、私のおっぱいを楽しめるかはすごく不安でした。読む側で言うと、乳の大小はあんまり気にしないんですけど、陰毛が生えているとちょっと苦手かも……となります。

――それはなぜ?

ど うーん、そこはふわっとしている部分なんですが。生え方とか気になってきちゃって、ノイズが多くなるのかもしれません。そんなふうに生えるかな、とか、そんな風に生えるけどちょっと汚すぎじゃないかな、とか、いろんなことを考え始めてしまいます。

――先ほどロリコンですかとお聞きしましたけど、ロリの魅力とは何か、あえて大きく言うなら?

ど 一番は、見た目が好きなんだと思います。細くて、薄くて、みたいな。ひょろっとしてて、肉付きがない。精神面とかもあるんですけど、まず見た目がすごい好きなんで。ロリババアとかでも全然いいんですよ。中身が男の子、TSでも全然構わない。見た目重視ですね。

――パーツフェチとかは特にないんですか?

ど 足が好きですね。細くてすらっとしてるのが好きで、結構頑張って細くしている部分がありますね。

――『平成JCin明治夜這い村オマケ本』(二〇一八)で、本当はスラっとした長い足も好きなんだけど、なかなか描けない、っていうお話もありましたよね。

ど そうですね、バービー人形やセーラームーンみたいな人間離れしている、すごく長い足ですね。ああいうのが好きなんだけどエロマンガ向きではないかなと思っていて、わざとちょっと体型を崩してたりもしてます。ただ最近は結構足長く書く作家さんが増えたんで、まあいいかなと思って伸ばしていくかもしれないです。

 あとパーツでいうと、女性器が好きです!

――以前のインタビューでもおっしゃっていましたよね。どの辺をこだわってますか?

サンプルはここまで!この続きは本編で。

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